−30− ページ30
夏「なんかあったか?」
食欲がなくて、お弁当を横に置いてベンチに座っていた私に、あとからやってきた夏也先輩がそう聞いてくる。
隣に座った夏也先輩は、何も答えない私に「まぁ、言いたくないなら無理には聞かないけどよ」と優しい声で言った。
『…幼馴染と、喧嘩しました』
喧嘩と言えるかどうかわからないが、今宗介に会って普段通りに接することができるとは思えない。
以前までなら、私と凛と宗介のうち2人が喧嘩したら誰かが間に入るのが当たり前だった。
宗介とこんな状況になったことは初めてだ。
私が謝るのも違うと思う。
けど、宗介に怒っている訳では無い。
昨日からどうしようもない感情が、グルグルと私の中を回っていた。
夏「今まで幼馴染として一緒に過ごしてきたんだろ?喧嘩するほど仲がいいってやつだろ」
夏也先輩が私を気遣っての言葉だということは分かっている。
だけど、どうやって仲直りすればいいのかわからない。
『…もう、前みたいに戻れなかったらどうしよう』
急に不安になって、昨日は我慢したのに涙が出てしまった。
きっと急に泣き出した私に、夏也先輩はギョッとしただろう。
それでもすぐにお弁当を置いて、私の背中に手を置いた。
夏「大丈夫だって、きっともう一度話せばすぐに仲直りできる」
夏也先輩の声が優しくて、どんどん涙が出てきてしまう。
頑張って泣き止もうと我慢しても、簡単に止められなかった。
夏「泣きたい時は泣いちまえ。大丈夫、俺しか見てねぇから」
そう言って引き寄せられ、気づけば夏也先輩の腕の中にいた。
ポンポンと優しく私の背中を叩き、夏也先輩は「大丈夫、大丈夫」と何度も言ってくれていた。
_____…
『すみませんでした』
夏「落ち着いたか?」
『はい』
めちゃくちゃ泣いて落ち着いてきた頃、今の状況がとても恥ずかしいものだと理解した私は、恐る恐る夏也先輩から離れた。
恥ずかしすぎて夏也先輩のことが直視できない。
『…すみませんでした』
もうこれしか言えない私を、夏也先輩は「気にすんな」と笑った。
夏「それに、見たことないAが見れて良かった」
そんなことを言われて、更に恥ずかしさが増加する。
『わ、忘れてください』
切実にそう頼んだら、夏也先輩は空に視線を移し、考えるような素振りを見せた。
夏「あー…無理だな」
『忘れてください!』
そう言いながら両手で顔を覆う私を見て、夏也先輩は楽しそうに笑った。
491人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アコ(プロフ) - トキヤloveさん» コメントありがとうございます!更新させていただきました!楽しんもらえると幸いです! (2021年10月12日 0時) (レス) id: b7dc70b3b5 (このIDを非表示/違反報告)
トキヤlove(プロフ) - アコさん» こんばんは 続き楽しみに待ってます。頑張ってください。 (2021年10月10日 21時) (レス) id: 321a17ab2b (このIDを非表示/違反報告)
アコ(プロフ) - トキヤloveさん» 初めまして。コメントありがとうございます!また応援もありがとうございます!引き続き楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年10月6日 0時) (レス) id: b7dc70b3b5 (このIDを非表示/違反報告)
トキヤlove(プロフ) - こんばんは 初めまして、トキヤloveといいます。続き楽しみに待ってます。頑張ってください。 (2021年10月4日 20時) (レス) id: 321a17ab2b (このIDを非表示/違反報告)
アコ(プロフ) - みらさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえてとても嬉しいです!なるべく早く更新できるように頑張ります! (2021年9月23日 1時) (レス) id: b7dc70b3b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アコ | 作成日時:2021年9月17日 0時