−２９− ページ29
佐野中を出て、しばらく2人で並んで歩いた。
もう少し先に行けば、宗介がよく座っている河川敷が見えてくる。
『ねぇ、あの手紙なんで渡したの？』
宗介が遙に渡した手紙。
宗介が持っているということは、宗介宛の筈だ。それを何故遙に渡したのか、不思議に思い質問した。
宗「読んでみたらアイツ宛だったからだ」
理解出来そうで出来ない宗介の回答に、私は首を傾げた。
宗「それより、なんで水泳部に入ってるんだよ」
そう私に聞きながら立ち止まった宗介に、私も足を止めて宗介の方を見た。
『えっと、誘われて…別に入りたい部活もなかったし』
詳しくは言わなかったが、ちゃんとこの答えは本当のことを言っている。
しかし、宗介は納得できないというような表情を浮かべた。
宗「もっと、自分に向いてる部活に入れよ」
そう言われて一瞬息詰る。
向いている。私に向いている部活って何なのだろうか。
黙り込む私に、宗介は「なんでマネージャーなんか」と続けた。
確かに、初めは水泳に本気で興味があったわけではない。
だけど、宗介と凛が好きな水泳を、私も知りたいと思ったのも事実。
けど、何を言っても言い訳にしかならないような気がした。
結局、泳げない私が水泳部に入ったことを、宗介は良いとは思ってくれないみたいだから。
宗「それに七瀬も…なんだよあの泳ぎは」
『確かに今はちょっと問題あるけど、きっと…』
宗介も凛も納得する泳ぎをするとは言いきれなかった。
近くで見ていたからわかる。今のままではダメだと。
だけど夏也先輩だって、個々の力はあるって言ってたし…。
『きっと、記録会までには仕上げるよ』
そう信じるしかない。
私の言葉に、宗介は目を見開いてから視線を逸らす。
宗「結局、お前も七瀬かよ」
『え？』
宗介の呟いた声は小さくて、上手く聞き取れなかった。
宗「見てることしかできないのに、わざわざマネージャーなんてやるなよ」
視線を戻したと思ったら、そんなことを言われて今度は私が目を見開いた。
宗介の言っていることは事実。
私は見ていることしかできない。
反論できないことが悔しくて、ギュッと胸が苦しくなった。
下唇を噛んで、泣きそうになるのを我慢する。
『…っ、帰る！』
これ以上何か言ったら涙が溢れそうで、私は宗介に背中を向けて駅の方に走った。
宗介が私の名前を呼ぶのが聞こえたけど、私が足を止めることは無かった。
宗「…くそっ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 491人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アコ(プロフ) - トキヤloveさん» コメントありがとうございます！更新させていただきました！楽しんもらえると幸いです！ (2021年10月12日 0時) (
レス) id: b7dc70b3b5 (このIDを非表示/違反報告)
トキヤlove(プロフ) - アコさん» こんばんは 続き楽しみに待ってます。頑張ってください。 (2021年10月10日 21時) (レス) id: 321a17ab2b (このIDを非表示/違反報告)
アコ(プロフ) - トキヤloveさん» 初めまして。コメントありがとうございます！また応援もありがとうございます！引き続き楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2021年10月6日 0時) (レス) id: b7dc70b3b5 (このIDを非表示/違反報告)
トキヤlove(プロフ) - こんばんは 初めまして、トキヤloveといいます。続き楽しみに待ってます。頑張ってください。 (2021年10月4日 20時) (レス) id: 321a17ab2b (このIDを非表示/違反報告)
アコ(プロフ) - みらさん» コメントありがとうございます！そう言ってもらえてとても嬉しいです！なるべく早く更新できるように頑張ります！ (2021年9月23日 1時) (レス) id: b7dc70b3b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アコ
| 作成日時：2021年9月17日 0時
