【Free!】待ち人

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夏「遙」


夏也先輩がそう呼べば「名前で呼ぶな」と隣で呟いたのが聞こえた。


夏「なにブツブツ言ってんだ？それより個人にしか出ない。しかもフリーしか泳がないってのは部長としては認められない！」


怒った様子で近付いてくる夏也先輩に、私は七瀬から離れるように少しだけ横にずれた。


「どうしても出ない気か？」という質問に、七瀬は頷く。


するとさらに顔を顰めた夏也先輩は、七瀬にプールに入るように言った。



夏「俺と50mで勝負しろ…種目は、フリーだ！」



そう言って服を脱ぎ捨てる先輩に続き、七瀬も上に着ていたTシャツを脱ぎ捨てる。


橘が止めようとするも、別の先輩が「ああなったら聞かないから、うちのキャプテン。まぁ、諦めて」と制した。



「私、自己紹介してないんですけど」なんて言えるはずもなく、足元に落ちている夏也先輩のジャージを拾って畳んでおくことにした。



"尚"と呼ばれた先輩がスターターを務め、始まってしまった勝負。


久々にみた七瀬の泳ぎに、私は目を細めた。


3年生の先輩が相手なのに、七瀬は先輩と並ぶように泳いできた。結局ゴールは同着。



同着のため、泳ぐのはフリーだけでいい。しかしリレーには出るという条件が出された。


プールから上がった夏也先輩に服を渡す。
お礼を言いながら受け取った先輩と私の目が合うと、先輩はハッと思い出したように目を見開いた。



夏「…あー、自己紹介の途中だったな」



この空気の中もうやりたくないです。

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