51.闇 ページ5
一瞬のことだった。
何が起こったのか直ぐには分からなかった。
気付いたら熊徹がヨロヨロと後退りしていて、足元に赤い点がいくつもあるのが見えた。
そしてその熊徹の背中に見えるのは刀。
見えているものが信じられなくて口元を両手で覆う。
すると何処からか笑い声が聞こえてきた。
『いちろうひこ…?』
一「父上!私の念能力と父上の剣で勝負をつけました!あなたの勝ちです!あんな半端者に父上が負けるわけがありませんからね!」
向こう側の客席にいるのは間違えなく一郎彦で、とても怖い顔をしている。
これは、一郎彦がやったことなの…?
信じられない。
一「そうだろ、九太!そうだろぉ!!」
その言葉と同時に一郎彦の胸に黒い穴のようなものが現れる。
猪王山の止める声が聞こえる。
だけど、止まる様子のない一郎彦は恐ろしい笑顔だ。
一「父上、今からトドメです。見てください!」
一郎彦が腕を動かしたかと思うと、熊徹に刺さっていた刀がさらに深く突き刺さる。
『う、うそ…』
熊徹は膝をついて俯いてしまい、そのまま動くことは無い。
悲鳴が上がる中、笑い続ける一郎彦。
私の知っている一郎彦はどこにも居ない。
恐怖で足が動かない。声が出ない。
視線をずらし、九太の方を見てみると九太の様子もおかしい。
そう思った次の瞬間、九太の着ていたパーカーの前が開き、九太にも黒い穴の様なものが現れた。
触れてもいないのに勝手に動く九太の刀。
それが向けられた先には一郎彦がいる。
宗「九太!闇を拒絶せよ!」
止めなきゃ
動かなかった足が自然と前に出て、気付いたら私は階段を駆け下りていた。
猪「やめてくれ九太!あぁ最悪だ!!」
一郎彦の方に刀が飛んでいくのが見える。
間に合えと言う気持ちで、走ってきた勢いのまま九太に抱きついた。
『九太やめて!!!』
ぎゅっと目を瞑り九太が止まってくれることを祈りながら腕にも力を込めた。
九「…っ、A?」
九太の声と刀が落ちる音が聞こえ、恐る恐る目を開けてみる。
一「九太…お前…許さない」
闇に飲み込まれるようにどんどん黒に染っていく一郎彦を見て目を見開く。
そして次の瞬間一郎彦の姿が消えてしまった。
九「ハァハァッ、おい、なに、寝てんだよ…おき、ろっ」
息を切らしながら熊徹にそう言った九太は倒れ込む。
『九太!』
354人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アコ(プロフ) - (名前)アリアさん» コメントありがとうございます!書かなきゃと思っていたので勢いで作ってみました。クオリティは高くないですが良ければよろしくお願いします (2021年7月10日 1時) (レス) id: b7dc70b3b5 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)アリア(プロフ) - すいません。完結しているのにあれなんですが、一郎彦編作って欲しいです。お願い致します (2021年7月9日 22時) (レス) id: 6a52b1fa20 (このIDを非表示/違反報告)
まなみ(プロフ) - 九太に惚れすぎてやばい(;ω;) (2021年4月3日 21時) (レス) id: 2412f61ab0 (このIDを非表示/違反報告)
なん - めっちゃくちゃいい話でした泣 (2020年1月31日 1時) (レス) id: 4ea39a9195 (このIDを非表示/違反報告)
杏彩(プロフ) - 親の前で号泣しちゃってヤバかった。最高。 (2020年1月6日 22時) (レス) id: 850c5cb3a7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アコ | 作成日時:2019年9月2日 22時