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「ねえ、ごめん。
コンビニ寄って良い?」
「うん、全然大丈夫だよ」
「サンキュー。次のコンビニ入るわ」
「はーい」
私の家の近所では1番大きいコンビニに入って、
車を停めるとエンジンをかけたまま
「ごめんね!ちょっと行ってくる!」
って小走りで店へ入って行った。
優しくかかる冷たい風が気持ちいい。
ふぅ
1人になった途端張っていた気が緩んで、
ため息がこぼれた。
さっきまでふつうに会話してたはずなのに、
1人になった途端また思い出す。
あたまの中が一気にごちゃごちゃになってしまった。
考えてみればなんども宏光くんの車には乗ったことあったけど、助手席に乗るのは初めてだった。
いつも私が座っていた後部座席。
振り返って見つめる。
私が2人にお願いしてゲーセンで取ってもらったちっこいクマのぬいぐるみが、
あの日のまま体勢を変えることなく寂しそうに座っていた。
.
.
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「これは宏光くんの車乗るとき専用のクマ!」
「はぁ!?せっかく取ったのに持って帰れや」
「わかってないなぁ〜涼は。
ね、いいよね、宏光くん」
「いいけど知らない間に俺の家に連れ去られちゃうかもよ」
「ははは、そん時はもっかい取ってもらうよ」
.
.
.
.
.
そこまで思い出して、慌てて目をつむった。
思い出しちゃダメ。
涼がとなりにいない現実に苦しむだけ。
じわっと溢れ出していた涙を頬を伝う前に拭って、
楽しかった思い出をまたひとつしまい込んだ。
「おまたせ!ごめんね」
「あ、おかえり!」
そのとき、
ちょうど宏光くんが帰ってきた。
よかった。
もうちょっと早かったら危なかった。
涙を見られては、心配させてしまう。
「では、改めまして。出発進行〜!」
「おー!」
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作者名:None [ノン] | 作成日時:2018年9月19日 23時