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「そんなことより、マーサ。お前もうすぐゲームだろ。行かなくていいのか」


ナワーブは部屋にある掛け時計を眺めながら口を開く。私の両手をニギニギとし続ける彼女は名残惜しそうに唇を尖らせた。


「もうそんな時間……ねぇ、A?また元気になったらもっとお話しましょう!ね?今日はゲームばかりで話す機会がないのだけれど……」


残念そうに私を見つめながら部屋から出ようとする。


「はいっ是非お話しましょう!」


背を向ける前に答えると彼女の表情が華やかに咲いた。「約束よ!」と言って部屋を出る。扉を丁寧に閉めてたったったという規則正しい足音を聞き遂げてからナワーブに顔を向けた。
目が合うと気まずそうに視線をずらす。さっきとは逆で私は必ず逸らさないと決めて見つめ続ける。


「悪い」


「ふふ、怒ってませんよ。私も言葉が足りませんでしたから」


「そうか」


そう言うと私の隣に腰掛けた。さっきより数ページ進んだ栞を目印に本を開く。


「一人で読んだほうがいいとも思ったんだが」


「そうなんですか?」


「分からない時に聞けないのは困るんじゃないかとも思って迷ってるんだ、今は介護がいるから出入り出来るが……その……」


目線を本に落としながらぽそぽそと話す彼に私は笑ってしまった。私としては本についての質問なら万々歳だが常に部屋にいる訳では無いし介護がなければ本来鍵をかけている状態なので出入り自由な部屋では無いのだ。


「じゃあ、このメモと筆記具をあげますよ。気になる所やページをメモして扉の投函口に入れるか直接渡していただければお返事しますし、なんなら広間にいる時にでも声をかけて貰えたら……!」


そういえば彼は「そうか、わかった」といい、目線を本ではなく文字に移した。
それを察した私は特に喋らず彼の読む本に視線をやり遠目で文章を追った。気づいたことといえば、彼の読むスピードはかなり遅い。私が見開きを読み切り二週目を見終わるころに次のページが進むのだ。


しかし、今日限りの時間がこんなに楽しくては明日からどんな生活になってしまうのだろう。
いつでも来ていいよと言えなかった自分に嫌気がさすが、さすがに異性をいつでも部屋にあげる訳には行かないことは私にもわかる。
これからも、本の感想が聞けることや質問に答えられることが嬉しい。これ以上の欲をぶちまけては困らせてしまうのは明白だ。

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とびこ(プロフ) - 黒猫山さん» 初コメありがとうございます♪そんなふうに言って貰えたなら本当に嬉しいです。これからも更新していくと思うのでよろしくお願いします! (2023年3月31日 12時) (レス) id: a150e1a772 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫山 - 更新お疲れ様です!朝からいいもの見れた気がする…。あと初コメでした!応援してます! (2023年3月31日 7時) (レス) @page37 id: 3a62e4e3a3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とびこ | 作成日時:2023年3月31日 5時

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