六話 ページ6
中でガタッと椅子から立つ音が聞こえたが、足音は聞こえない。
話を聞いてくれるようである。
「私は、福沢殿と対面したことはあるが貴方を良く思わなかった者だ。だが、話さなければならない用事ができてしまった。話を聞いてくれるか。」
「すまない、俺を良く思って無い者など星の数ほど居る身だ。名前を。」
「渋沢栄一だ、いくつか会社を営んでいる。以前そちら方は此処の場所を私から買われていかれた。」
ここまで自己紹介して断られたりしたら面が立たないし、何より教え子に申し訳がない。
話の分かる男であってくれ、福沢殿。福沢様。
「わかった中で話を聞こう」
足音が聞こえ、眼前の扉が内に開いた。
中の男の表情は逆光であるためか彼のほうが身長が高いためかよく見えない。
逆光のせいに決まってる。
それしか信じない。
「渋沢栄一、殿。噂はかねがね。」
「それはいやな噂であろうか」
「少なくとも看板を下ろすことになるような噂ではない」
「それならば良かった」
中へ入ると読んでいたのであろう、書物と眼鏡が机上に置いてある。
勤勉であるのは相変わらずのようだ。
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作者名:ミヤモトきのこ x他1人 | 作成日時:2016年11月11日 23時