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五話 ページ5
さて、社長室の前まで来てしまった。
気づけば、煮えくり返っていた腹も沈静化してしまっている。
帰ろうと思えばいつでも帰れるわけだが、私の事だからまた勢いでここまで来てしまうだろう。
今日このまま特攻したほうが今後のためだ、頑張れ私。
どうせ気まずいと思ってるのは私だけなんだ。
「…よし」
緊張をほぐす方法を先日聞いたな。
人の字を掌に何度書くのだったか。
難しい漢字のほうが効果がある気がするのだが、何と書こう。
馴染みある物の名前を書いた方が良いのだろうか。
尊敬する方の名前のほうが効く気がする。
だがそんなお方の名前を私の掌に書いてしまってもいいのだろうか、いやだめだろう。
…
「埒が明かない、ままに行くか」
頭が煮えてきたところで自ら思考を遮断する。
あと少し経ったら知恵熱でも出て頭部から煙でも出ていたところだ。
日常生活で緊張する場面が滅多に無いせいだ、普段の仕事に緊張して臨めという神の思し召しか。
生憎、神は信じてないのだが。
中に人の気配はあるから、少なくとも誰かしらは居るだろう。
「福沢諭吉殿、扉を開けずに聞いてほしい。」
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作者名：ミヤモトきのこ x他1人 | 作成日時：2016年11月11日 23時
