0時の水槽、溺れる魚【天谷奴零】

夢を見れば馬鹿を見る ページ35

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イケブクロとオオサカを結ぶ320マイル



車道で約五時間という壮大且つ優雅過ぎる帰路までの距離を走る。尻目に流れて行くジオラマが恋しく惜しんだ




『＿＿っはぁ〜〜着いた、』




数時間ぶりにイケブクロの澄んだ空気を肺一杯に取り込み伸びやかに関節を馴らす。ほんのり宙を舞うダイヤモンドダストを睫毛に乗せた




『零さん、朝早くからこんな遠い所までご足労お掛けしました。ありがとうございました』


「礼には及ばねぇよ。俺の方こそいいモン見させて貰った、ありがとな」




にこやかに微笑む彼のもと、河川敷付近に車を停車させて貰った







太陽は黄道をなぞらえる



水面上の素元波はホイヘンスの原理に忠実だ



景色ばかりをしきりに気にしては次の言葉を探してる





『(別れを……告げなきゃ、)』




無言の対面が心苦しくむず痒い。想いとは裏腹に行動には及ばない。ジレンマの板挟みが、繰り返し空気を溢す行為に敵わない



『あの』



やっとの思いで心持程度の振り出す一声は漂う燻りに物怖じしてしまいそうだ



『＿＿他人の人生に影響をもたらしてこそ、人生には意味があるんでしたよね。』


「……あぁ」






＿＿私は貴方の人生に、いや、その一部分にでも干渉出来たでしょうか。






……なんて野暮は言わない




大なり小なり、"影響していなければならない"のだ。そうでなければ『存在意義』が無くなってしまう




『零さん』




息継いではグリーンとイエローの双眼に笑みを落とした




『大好きです。零さん』




迷いなく、惜しみなく


真っ直ぐ歩み寄り彼との身長差を埋めるように服を引っ張った


ゼロ距離



さよなら、零さん。








彼の唇に、自分のそれを重ねた





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二郎side





カラリと晴れた青空


休日の日課としている身体作りの為のトレーニングを着々とこなす。渇いた心身に水を与えてペットボトルを握り潰した




「えーと、次はインターバル……」





＿＿ふとどことなく、脈絡も無く土手の登りを見上げた。故意的なんてものは無かったが、目線の先には偶然にも幼馴染の姿を捉えた




「A……？」



外で見るのは珍しいなと声を掛けようと片手を挙げた矢先だった。その手はピタリと止まり、鈍器で激しく殴られた感覚に陥った






＿＿幼馴染の彼女が、明らかに見知らぬ男性にキスをしていたのだから

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