ストロボ数cmの剥奪者 ページ25
・
簓side
「...お、」
途端に玄関先の一枚扉を隔てたその向こう側から今日はやけに荒っぽい粗末な音がガチャガチャ耳にする
鍵一つ二つ開けんのにえらい時間掛かんな、とソファに深く腰掛けた状態で愉しげに視線を送っていればようやく解錠出来たであろう、人物が姿を現せた
「お帰りー、零。」
「...あぁ」
帰ってくるなり早々こちらの愛想を一言返事で済ませてしまった仲間に機嫌悪いんかいなと口を尖らせる
現状、愉快なおっさんと言うより何処か頼り無い巨体、の表現を模した彼は何の脈絡も無く唐突に口を開いた
「なぁ、簓。」
「なんや?」
「__今日あの子来てたか?」
沈黙。
一つ間を開けてしまった自分にこんなにも嘘つくんが下手やったんかと嘲り呆れた
「...さぁ?ワイは知らんがな。あ、そうそう今度の公演なんやけど」
気を取り直すようにして能天気さながらワントーン声を高くして意気揚々と、なんなら身振り手振りでお得意のトークを繰り広げていれば話の最中にも関わらず詐欺師は外出用の靴を履き直した
「話の途中悪いな簓、__用事思い出したから行ってくる。今日は事務所戻らねぇから施錠しっかりしとけよ」
普段の本調子を取り戻したらしい彼は言いたい事だけ残してしまうとこちらの嫌悪、疑心にも目もくれず短い帰宅を終えた彼は再びオオサカの夜へ溶け入る
「...アホやん」
**
『...ツイてない』
普段から中々溢すことの無い一人言も今回ばかりは言わずにいられなかった
__と言うのも、ここは駅のホーム。あからさまな閑散とした状況を見るに終電を終えたという合図であり__
まさかのその終電を逃す自体
ここ最近の不幸が今日、というよりこの夜に一度にして降りかかったようだ
帰る手段はタクシー一択だがここからイケブクロまで、と考えるととんでもない金額の跳ね上がりに頭が痛くなる。怖くて口座も見れそうにない
だがそんな優柔不断も言ってられないのは明日も学校があるからで。そうと決まれば腹を括る
階段を駆け上がり改札口を抜けようとした瞬間だった
「よっ、嬢ちゃん。終電逃しちまったか?」
『え、__』
カードを手にしたまま改札口一歩手前で目を見開いた
『...零さん?』
彼の名を口にせずにはいられぬ程、目の前に彼が存在しているのが信じられなかった
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魔灯 - 零さんは関西弁じゃないですよー (2021年9月20日 17時) (レス) id: 43f1bbcd44 (このIDを非表示/違反報告)
Kurkura2Kurkura(プロフ) - お返事ありがとうございます!!お話が、終盤になるにつれてヒロインの想いが葛藤して、零さんと対峙するヒロインの想い、零さんの想いなども読んでいてとても心がギュッとなりながら最後まで読みました!!素敵な作品に会えてよかったです!お疲れ様でした! (2020年3月15日 21時) (レス) id: 5afeb6b27b (このIDを非表示/違反報告)
映国 - しづさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。初作品ながら妥協は出来ない等となまじ頭が一丁前に葛藤した作品でした。ご期待に添える事が出来ましたでしょうか、感謝と申し訳無さがせめぎあっております。最後までありがとうございました (2020年3月15日 18時) (レス) id: 9bb31441b5 (このIDを非表示/違反報告)
映国 - Yさん» おコメントありがとうございます、お疲れ様でした。随分と長らくかかってしまったこの作品。こんな筈では、と苦笑いしつつもやはり書き終えてしまうとちょっぴり寂しいような。と同時に待っていて下さった心優しさに改めて感謝申し上げます (2020年3月15日 18時) (レス) id: 9bb31441b5 (このIDを非表示/違反報告)
映国 - 名無し9253号さん» 労いのお言葉大変嬉しく思います、ありがとうございます。処女作にあたり至らない点も多々あったのでは、と不安に苛まれる中無事完結に持ち込む事が出来ました。最後まで見届けて下さりありがとうございました (2020年3月15日 18時) (レス) id: 9bb31441b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:映国 | 作成日時:2019年10月6日 8時