アクアリウムにご招待 ページ14
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__意識も視線も投げやりに、ただ呆然と空を見つめていた
「大丈夫か嬢ちゃん」
砂糖を一匙も含まない色気漂う渋いテノールが耳の鼓膜を妖しく震わす
『ぇ、あ...零さん』
さもその存在にたった今気付いた様子を釀し出す自身。だがここはオオサカディビジョンメンバー三人の事務所であって私を迎え入れたのも何を言おう、隣にいらっしゃる零さん様様なのだ
「やけに元気ねぇな?」
『あー、...そう、ですね...」
いつもなら『零さん心配してくれるんですか...!!』なんて歓喜に震えてる頃だろう
本来の自分であれば。
しかし今回ばかりはお茶を濁す様な曖昧な返事でその場凌ぎに徹する
『(全然消えない)』
消えないのだ。あの時から。
__水槽の中に堕ちていく夢が。
『あの、零さん』
床に置き去りにした鞄を拾い上げて立ち上がる。彼に向き直り深く一礼した
『今日は帰りますね』
顔を上げ、彼の描く表情すら確認しようともせず些か気持ち早足で扉に向かう
ドアノブに手を掛けた。僅かな力を込めて押し開く。驚く事に肺一杯に取り込んだオオサカの街並みと空気が、突如としてシャットされた
__閉め戻された、のだ
「悩みぐらいなら聞いてやれるけど?」
一回り大きい影が掛かる。重なった手、半径数cm、決めつけは煙草と香水の入り混じる苦い香り
距離が、近い。
心配してくれているのだろうが、不謹慎にも胸がドキリと心拍を鳴らした。バクバクと音が聞こえそうで恥ずかしくなる
「...まぁでも。誰しも言えない事の一つや二つあるよな。__って事でそんな嬢ちゃんにいいモンやる」
ニカッと意外にも人懐っこい砕けた笑みを綻ばせた零さんに握らされたものは...一枚の紙切れ
そして、零さんの手に握られているのも私と全く同じもの
「...水族館。興味あるか?」
『え__』
「__嬢ちゃんさえ良けりゃ行ってみるか?
一緒に」
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魔灯 - 零さんは関西弁じゃないですよー (2021年9月20日 17時) (レス) id: 43f1bbcd44 (このIDを非表示/違反報告)
Kurkura2Kurkura(プロフ) - お返事ありがとうございます!!お話が、終盤になるにつれてヒロインの想いが葛藤して、零さんと対峙するヒロインの想い、零さんの想いなども読んでいてとても心がギュッとなりながら最後まで読みました!!素敵な作品に会えてよかったです!お疲れ様でした! (2020年3月15日 21時) (レス) id: 5afeb6b27b (このIDを非表示/違反報告)
映国 - しづさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。初作品ながら妥協は出来ない等となまじ頭が一丁前に葛藤した作品でした。ご期待に添える事が出来ましたでしょうか、感謝と申し訳無さがせめぎあっております。最後までありがとうございました (2020年3月15日 18時) (レス) id: 9bb31441b5 (このIDを非表示/違反報告)
映国 - Yさん» おコメントありがとうございます、お疲れ様でした。随分と長らくかかってしまったこの作品。こんな筈では、と苦笑いしつつもやはり書き終えてしまうとちょっぴり寂しいような。と同時に待っていて下さった心優しさに改めて感謝申し上げます (2020年3月15日 18時) (レス) id: 9bb31441b5 (このIDを非表示/違反報告)
映国 - 名無し9253号さん» 労いのお言葉大変嬉しく思います、ありがとうございます。処女作にあたり至らない点も多々あったのでは、と不安に苛まれる中無事完結に持ち込む事が出来ました。最後まで見届けて下さりありがとうございました (2020年3月15日 18時) (レス) id: 9bb31441b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:映国 | 作成日時:2019年10月6日 8時