【ＲＫＲＮ】君がため【尾浜勘右衛門】

ね ページ21

「……えーっ…と。あの、Aちゃん？
あー……どうか、したの？」

「何だぁ？ 急に大声あげて、元級友の名前叫んで。
喧嘩した夢でも見たか？」


はなちゃんはそこには居なくて。

その代わりの様に、不破雷蔵君と鉢屋三郎……あぁ、違った。鉢屋五郎君が向こうから歩いてきていた。


「……うん、そうよ。寝ぼけちゃったの。
急に大きな声なんて出してごめんね、びっくりしたでしょう？」

「ううん、大丈夫だよ。
僕も今朝寝ぼけててさぁ、三郎を見てね、
『待って待って！！ 僕が二人居るんだけど！？
え、僕が僕で僕も僕！？
あ！ 駄目だ！ これ西洋の書物にあったどっぺるげんがあだ！！
倒さなきゃ！！！！』
とか考えちゃってさぁ、朝っぱらから三郎と本気で戦ったんだよ。
それで、三郎を気絶させたところでそれが三郎だって気付いたんだ｡」

「雷蔵本気で怖いからな。私の言葉なんて聞いちゃくれなかった｡」

……嗚呼、やりそうだ。その光景が脳裏に鮮明に浮かぶ様。


「…あれ、二人はなんでここに？
くのたま長屋は男子禁制。いつもならシナ先生が飛んできてる筈…」

「いや、お前が来るのが遅いからみんなが気にしてて、それを良いことに兵助が豆腐ごり押ししてるからさあ、呼んでこいって勘右衛門に頼まれたんだ。『昨日のことは気にしないで、俺の勘違いだから！』だとさ｡」

「山本シナ先生にも頼まれたよ。
『かなり落ち込んでいるようだから、元気付けてあげて』…だって。
うーん…あ。とりあえず、豆大福いる？」

「ありがとう、食堂には今から行こうと思ってたの。
あと豆大福もありがとう。またいただくわ｡」

今行こうとしてたなんて、大嘘だけど。


いつもの時間からは、どれくらい経ったんだろう。

ぼんやりしながら、二人と一緒に食堂へ向かった。




「なあ、判ってくれよ勘右衛門、八左エ門！！
この子は大豆多め、こっちの子は大豆少なめ、あの子はにがり多め、あっちの子はにがり少なめなんだよ！！
ああそういえば、にがりは海で取れるんだ。だから俺は兵庫水軍の方々に頼み込んでにがりをもらっている。そしてまたこのにがりで作る豆腐……これがもうっ、絶品なんだよ！！ 自分で言うのも何だけど、やっぱり俺って豆腐作りの才能が……。
あれ、おはよう七瀬。遅かったな、滝夜叉丸たちも心配してたぞ｡」


……兵助君には、素直に引く。

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