脇役女子が主人公 (ページ33)

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体育祭前ページ33

「で、テメェの個性は何だ」

食堂で向かい合わせに座った。
辛そうなカレーを食べながらそう言った爆豪くん。

「私の個性はね、"妖精"。
羽はやしたり、自然のものを操ったり…って言っても小規模だけど」

「それをどうしたいんだよ」

どうしたいか、なんてたくさんある。

もっと強くなりたい。
母や兄たちみたいに。

もっと派手に見せたい。
たくさんの人の目に止まるように。

もっともっと出来ることを増やしたい。

「…今、体育祭まで時間ないから」

お箸を置いて爆豪くんの顔を見た。

「目立ちたい、派手に」

「目立ちてえ？」

目立ちたいって言葉はあまり良くない。
付け加えるとすれば。

「目立って、プロに見てもらって…強くなりたい」

体育祭は見せ物だ。
目立てば目立つほどたくさんの人の記憶に残る。

私を見てほしい人がいる。

「強くなるっていうヒーローへの通過点のために体育祭で目立ちたい」

足の上で握りしめた拳。
少し緊張しながら頭を下げた。

「私に付き合ってほしいわけじゃないの、ちょっとでいいから私にヒントをください」

他人に頼るなんてどうかしてる。
でも自分で見つけられないから私と違う人生を歩んできた人の意見を聞きたい。

「何でもやれ」

「何でも？」

「新しい事考えろ」

その小せえ脳みそでな。と付け加えられた。
だいぶ失礼じゃない？？？

「やり方変えろや、ただでさえ訳分かんねえ個性なんだったら何でもやるしかねえだろ」

出来る出来ないじゃなくてやってみないと分からないから。

妖精にできる事はなんでも出来るはず。
だったら当てずっぽうでも何でもやらなきゃいけない。

「そっか、そうだよね…ありがとう」

「体育祭で目立ちてえなら叫びながら飛んどけ」

「それはきもい…」

「どうせ俺以外が目立つなんざ無理に決まってんだよせいぜい無駄な努力してろ」

クソだなあ。
でも爆豪くんの言ってる事は正しかった。

…いや、最後のは正しくないけど。

私はお母さんやお兄ちゃんたちに習おうとしてた。
私には違う得意があるかもしれないのに。