ほんの少し先の話を

推論 ページ33

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「分かりましたよ、犯人が」

　突然の霧立の言葉に、その場にいた全員が彼女に注目することとなった。
　意外にも安室は黙ったまま、彼女の言葉を待っている。お手並み拝見といったところか。コナンもまた難しい顔をしているものの、今のところは何も言わなかった。

「それは本当ですかな？」

　警部の目暮が代表して尋ねる。

「ええ。そもそもこの事件はそれほど難解なものではありません。単なる偶然が重なっただけです」
「それで……犯人は誰なんです？」

　そう迫る小五郎を、彼女は薄く微笑みながら諌めた。

「落ち着いてください、今から説明致します。この事件は難しくはありませんが、少々複雑なのです」

　周囲に向き直り、軽く咳払いをして話し始める。

「一番初めに違和感を持ったのは、最初の事情聴取のときでした。ある人物の発言が矛盾していると感じたのです。それは……牛原さん、あなたですよ」

　名指しされた彼はうろたえ、しどろもどろに訊き返す。

「ぼ、僕ですか？」
「あなた、社内新聞を書いていらっしゃるそうですね。新聞にはどんな記事があります？ どなたか覚えていませんか？」

　この質問には、受付嬢の十文字小夜子が答えた。

「私はいつも読んでいますが、いろいろな記事があって何とも……。イベントごととか、新しい事業や企画の紹介もあります。それから……」
「それから？」
「社員のインタビュー記事です。この記事は毎号掲載されていたはずです」
「なるほど」

　霧立はその証言に安堵の息をつき、それから満足そうに相槌を打った。すると、それまで黙っていた高木が口を開く。

「だとしたら……牛原さんの証言は妙ですね。社員のインタビューだなんて、真っ先に社長のことを記事にするでしょう。亡くなった社長のことは、噂程度しかご存じないとおっしゃっていたのに」

　高木はゆっくりと思慮深く言った。

「そこですよ。まあ、彼自身がその記事を書いたとは限りませんので決め手には欠けますがね。しかし、噂程度というのも言い過ぎでしょう、疑念が残ります」
「そ、その記事は僕の担当でなかったので、詳しいことや社長のプライベートなどは本当に知らないんです」
「そういうことにしておきましょう」

　牛原三矢はまだ何か言いたそうだったが、有無を言わさぬ霧立の口調の前に、それは叶わなかった。

「記事の件はきっかけにすぎませんからね。この先が最も重要で、この事件を複雑化している原因なのです」


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夢主の趣味は読書。

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