対向車線【紫】 (ページ29)

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何とか泣き止んで、大倉くんの家に信五がいるという前代未聞の状況を把握して、

ようやく落ち着いた後に聞いたその話。

情報量多すぎて、頭追いつかないんですが……

「――やからまぁ、ミカちゃんとの報道は、
全部、事故やねん。

付き合うてなんか、ない。」

この数ヶ月溜め込んできたものが、一気に弾け飛んだような気がした。

安堵か、驚きか、はたまた虚無感か。

「じゃあ、何で今まで否定してくれなかったの…？」

「それはほんまにすまんかった。
むちゃくちゃに傷つけたAに、軽い気持ちで近付くことが、できひんかったんや。

……っていうのんと、大倉に近付くな言われたからっていうのもある」

――それを言われて、あたしはどうするのが正解なのだろうか…

ミカとの報道が嘘だった、だから信五のことを好きなままでいる？

まだ、信五の気持ちも分からないのに…

「――なぁ？

あん時大倉が言うてたやんか。
ここ最近、Aちゃんがどんだけ悩んでたか知らんやろ、て。

俺、阿呆やから…分かってあげられへんねん。

何を悩んでたのか、俺には分からへんけど、何か俺には言えへんようなことやったんやろ？

教えてくれへん？
お前は、ずっと何を抱えとったんや…？」

いつも憎まれ口減らず口ばかりの信五が、どうしてそんなに必死な顔をしているのか。

あたしはどこか、全然違う人を見ているような錯覚を覚えていた。

"ボケ！そやってストレス溜めたらあかんねんで！"

"シャキッとせい！全部吐き出せ！"

いつもの信五なら、きっとあたしの頭をわしゃわしゃと撫でながら、そんなことを言っていただろうに。

今の信五は、まるで壊れ物を扱うかのように、控えめだ。

そう言うあたしも、多分本来なら

"信五みたく能天気に生きてらんないのっ！"

"余計なおーせーわ！"

って、笑ってるんだろうな。

総じて、今のあたしたちの状況は、

とてもあたしたちらしくない。

――でも、うん。

ミカとの報道の謎が解決したんだとしたら、

あとはもう、聞きたいことは一つだ。

「――あたしは、信五にとって、何？」

そんなことを聞くあたしは、ちょっぴり我儘かもしれない。

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