対向車線【紫】 (ページ24)

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今日も1日の仕事を終えて、高橋さんの車に乗り込む。

「A、お疲れ。今日はもう終わりだよね？
家でいい？」

「うん、家までお願いしまーす」

今日も雑誌の撮影に取材と打ち合わせ等々。

そういえばドラマの話も来ていたな。

ぼんやりしながら携帯を弄っていると、

ピコンと画面上部に通知のバナーが現れる。

『今日飲みに行かへん？』

大倉くんだ。

もうこんなお誘いが来ることも稀ではなくなってきた。

『いいよ。いつものとこ？』

『あーいや、今日は俺ん家来ぇへん？』

『了解。じゃあ後で』

大倉くんの家に行くのは初めてではない。

家に行ったとてそういう雰囲気になることなんて決してないし、

何より人目を気にせず飲んで愚痴れるから宅飲みはなかなか好きだ。

「相変わらずでっかい部屋だね」

御大層なタワマンに住む大倉くんの家は、いつ来ても広すぎてきょろきょろしてしまう。

「Aちゃんも稼いでんねやからあんまり変わらへんやろ？」

「あたしは掃除が面倒くさいからあんまり広い部屋には住まない主義なんです」

「何やそれ(笑)」

やはり今日も、部屋には他の女の影がない。

大倉くんは絶対モテるだろうに、大倉くんから恋愛沙汰の話題が一切出てこないから、

あたしの愚痴を聞くためだったりして？と思って何だか申し訳なくなる。

「ああっ！！」

グラスを二つ準備してから、冷蔵庫を漁っていた大倉くんがいきなり大きな声を上げた。

「やっば、俺の大好きな酒買うてくるん忘れたわ！

ちょお、俺買ってくるからさ、待っとってくれへん？」

「はぁ？そんなにそのお酒がいいわけ？
わざわざ買いに行くほど？」

「今日はその酒の気分やねん！
じゃあ、待っといてな～！」

財布と携帯を持って、大倉くんはバタバタと出て行った。

家主不在の家に取り残されるってどうなのよ？

すごく暇なんだけど？

テレビ見るのも何だしなぁ。

…よし、大倉くんの部屋の物色でもしよう。

イヤラシイDVDが出てきたら、大倉くんが帰ってきたときに思い切り爆笑してやろう。

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