対向車線【紫】 (ページ3)

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と意気込んだはいいものの、

あたしが結局気を遣わなくていい友達という立場に甘んじているのもまた事実。

友達は、ラクだ。

些細なことで喧嘩が起こることはあれど

相手の行動にいちいち口出しする必要はないし

修羅場があったとしても、恋人に比べれば幾分関係修復が簡単。

嫉妬の感情もなければ浮気という概念もない。

そこに気持ちが介在していなければ、の話だが。

気持ちがあるから厄介なのだ。

信五と両想いになるというタスクを達成したと思ったら今度は彼女の立ち位置を獲得するというタスクを課せられ。

普通ならそれらはセットのタスクだろうよ！

両想いなのに付き合わないなんてあり得ない！

なんてことはないからさらに厄介。

誰しも色々な事情を抱えているのは当たり前。

好きだからってそれだけで付き合えるなんて考えは誤りなのだろう。

あたしとて、手放しに付き合うことを望める立場でないことは分かっている。

仮に信五が彼女を求めているにしても、あたしらは一応テレビに出るお仕事をする人間で。

自由に恋愛できるわけでもないのだ。

だからあたしは友達という関係に甘んじてしまうのかもしれない。

とは言え。

「お前の誰に何と言われようと折れないタフさはすごいなぁ…」

あたしを覗き込むくりくりした目とか。

「中身はそんなやけど、見た目は人一倍キレイやもんな！」

照れもせず堂々とあたしの仕事を褒めてくれるところとか。

「嫌なことあったら溜め込むな！ちゃんと吐き出せ！やないと太ってまうで！」

恋愛に関しては鈍感なくせに人のストレスや痛みには誰より敏感なところとか。

馬鹿みたいに、何もかもがあたしをドキドキさせるもんだから。

あたしのモデルという立場とか

信五のアイドルという立場とか

信五が彼女を求めていないとか

色んな障害物さえ軽々と越えてしまうくらいに、
あたしの気持ちは膨らんでいるのだ。

あたしもオンナノコだから

やっぱり求めてしまうんだよ。

あなたの彼女というポジションを。

そこにリスクがあると分かっていても

正々堂々と恋愛しないでどうする。

芸能人かそうでないかなんて関係なしに、

恋愛にリスクはつきものだ。

いつ崩れ去るかも分からない、脆いものなんだ。

そうだそうだ。

あたしの進む一本道は横道に逸れることなんてない。

あなたに向かって一直線だ。

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