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「あたしは」
不意に口を開いたあたしの言葉に、
大倉さんはビクッと肩を震わせる。
「あたしは、覚悟も何もできないよ？
でも、
そんなことどうでもいいくらい、
あたしは結局あなたが好きだから」
自分でも驚くくらいポロポロと零れる本音。
「章大でも大倉さんでも変わらない。
あたしはあなたが好き。
だから……隠し事しないで、
これからはちゃんと全部、教えて？」
「―――……！」
「ちょ、ちょっと(笑) 何泣いてんのよ！」
「ズッ……おれ…別れなあかんねや思て……ズッ」
ボロボロと涙を零し始めた大倉さん。
あーあ、涙ぐちょぐちょだし鼻水まで垂らしちゃって。
この人本当にアイドル？(笑)
慌ててハンカチとティッシュを持ってきて渡すと
ハンカチで目元をグシグシ拭いズビズビ鼻をかむ。
落ち着いて改めて顔を見ると目真っ赤、鼻真っ赤。
「ぶはっ(笑)」
「ズ……何笑てんねん…」
緊迫した雰囲気がふっと和らいで、
あたしたちはどちらからともなく笑い合った。
「あああぁぁー！！よかったぁ、ほんまに！」
ガバっと抱き締められた。
抱き締める腕から伝わる体温は、
あたしの知るそれと変わらない。
"小倉章大"でも"大倉忠義"でも同じ、
会社員でもアイドルでも同じ、その温もりに、
あたしは結局ドキドキしちゃってるんだから仕方ない。
「おん、やっぱり、無理はさせると思うわ。
あんま外出歩かれへんし、普通のお付き合いはできひんと思う。
けど、一緒に頑張ってくれる？」
「もちろん。あたしはそのつもりだよ」
「たまには、俺ん家呼ぶから」
「うん、楽しみにしてるよ、……忠義」
初めてその名前を呼ぶと、忠義はうわっ！と身体を離した。
その顔は真っ赤になっていて、
目も鼻も真っ赤だから、顔全体が赤くなっちゃってる。
「破壊力半端な！」
「今後も章大って呼んじゃうかもなぁ」
「それはなんか……もぉあかんわ。
ヤスのこと言うてんのかと思ってまう」
「誰のせいだよ！」
付き合う前は、芸能人と付き合うなんてあり得ないと思っていたけど
今では、もう忠義じゃないといけないみたいだから
頑張るしか、ないよね。
あたしにはもう見えてるよ？
忠義と過ごす、未来が。
まあ、もっとずっと先になるだろうけど。
Fin.
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作者名：渡璃凛 | 作成日時：2020年8月25日 16時
