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大倉side
「ちょっとそこのコンビニ寄ってもええ？」
マネージャーの車での移動中、雑誌でも買おうとコンビニに寄ってもらった。
「買ってきましょうか？」
「んや、いい。俺行くよ。すぐ買ってくる」
マネージャーの車を降り、コンビニの雑誌コーナーに向かう。
「……………は、っ！」
雑誌コーナーに、見慣れた後ろ姿。
嘘やろ？ここで会ってまう？
まずい、今気付かれたらあかん。
雑誌は諦めようと、踵を返そうとしたとき。
Aが、一冊の雑誌を食い入るように見つめているのに気付いた。
「――――！」
Aが見つめるその雑誌の表紙には
デカデカと写る俺の顔と、デカい文字で書かれた"大倉忠義"の文字。
Aの前では伊達眼鏡をしていたとはいえ、
流石にあんなドアップで俺の顔見てたら気付かんはずはない。
俺は咄嗟にコーヒーだけ買って、コンビニから走り去った。
「っは、あ……すみません、すぐにここ出て！！」
「え、はい、どうしたんです？」
「ええから！」
発進した車の車窓から、もう一度コンビニの雑誌コーナーを見ると
さっきは見えなかったAの表情が、ガラス越しに見えた。
―――あぁ、あれは、気付いたパターンや……
遠目で見づらかったけど
あんな目見開いて、肩震わしてたら、もう…
畜生、バレたときのシミュレーションは何度もしてきたけど
いざとなったら頭ん中パニック状態で何も思い浮かばへん。
どないしよ………
「バレたんや」
俺の様子を一目見ただけやのに、
ヤスは一発で見抜いてきよった。
ほんま、そのお花畑の頭ん中のどこにそんな鋭さ隠し持ってんねん。
「やから言ったやろ？バレるのも時間の問題やって」
「おん……」
俺が"小倉章大"やなくて"大倉忠義"って知ったとき
Aはどう思うんやろ。
嘘ばっかつき続けてきた上に俺が芸能人やと知って
俺のことを突き放すやろか。
嫌や……嫌やけど、
もし芸能人とは付き合えへんとか言われてもうたら、
俺、何も言えへん……
「……実は気付いてへんかったとか、ないかな…」
「そんな僅かな可能性に縋ったってカッコ悪いだけやでー」
「ですよね……」
俺、どんな顔してAに会いに行けばいいん？
何もなかった振りして、ええのん？
無理やんなぁ。
あかん、頭回らへん。
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作者名：渡璃凛 | 作成日時：2020年8月25日 16時
