凸凹道くらいが丁度いい【∞】 (ページ37)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:82,683 hit

・ページ37

俺には彼女がいる。

仕事が忙しくてしょっちゅうは会いに行けないけど、なんとか時間を見つけて会いに行く。

彼女はさばさばした性格で、曲がったことが嫌いで、

あまり甘い雰囲気にはなりづらいけど、

あっさりしているのにすぐ顔を真っ赤にさせるところとか、
抱き締めたときに感じる華奢な肩とか、
気持ちいいくらいに大笑いするその笑い声とか、

充分に俺をドキドキさせてくれる彼女。

だけど一つ、重大な問題があった。

それは、付き合う前に彼女の口からポロッと出た言葉。

『芸能人と付き合う人って、度胸あるよね』

『あたしにはそんなハイリスクなお付き合いはできないかな』

既に彼女にむちゃくちゃ惹かれてた俺にとってグサリと刺さる言葉だった。

だから俺は、自分の職業と名前を偽って、彼女と付き合い始めた。

"小倉"という苗字は本名をもじって。

"章大"は咄嗟にメンバーの名前を使って。

本当は街を歩いたりしたいけど、職業柄できない上に、俺の家に呼ぶのはハイリスクだから、彼女の家でデートをする時がほとんど。

何をするというわけでもなく、本を読んだり、音楽を聴いたり、お酒を飲んだり、添い寝したりするだけの怠惰な時間で

彼女に無理をさせてるだろうか？と思うけれど、

まぁ俺も彼女もマイペースな人間だからよしとしよう。

テレビをつけると俺が映ってる可能性があるから彼女の家ではテレビは付けない。

彼女もテレビはあまり見ないらしいから、俺のことも認識していないらしい。

そして、彼女の家に行くときは、俺の家に呼べないことのせめてもの罪滅ぼしとして料理を振舞うようにしている。

彼女はすごく美味しそうに食べてくれるし、たくさんお替りもしてくれる。

いっぱい食べる女の人って素晴らしいと思う。

俺の名前は大倉忠義。

彼女、Aには内緒にしているけど

一応、ばりばりアイドルやってる。

彼女も、あまり踏み込んでこないタイプだからか、俺の仕事に関してわざわざ詮索するようなことはしてこない。

芸能人と付き合う度胸がないという彼女に、俺の職業がバレるわけにはいかない。

隠すのは心苦しいけど、俺はAのこと大好きやから

隠してでも、付き合いたいし、大事にしたい。

そんな彼女と付き合い始めて、もう１年近く経つ。

・