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そんな風に甘々なお付き合いをしていれば、丸山さんはあたしだけを見ているんだっていう錯覚に陥るのも無理はない、と思う。
外で歩いたりできないから手をつなぐことはほとんどないものの、
家行ってるし、ハグもキスもしてるし、やることやってるし……
ごく普通の付き合いなのでは？と思っていた。
でもあたしはある時気付いてしまったんだ。
丸山さんから一度も「好き」と言われたことがないと。
思い返せば付き合い始める前から頭ポンポン、ほっぺむにむにはいつもされていたし、
「可愛ええなぁ」というセリフは日常茶飯事だったし、
分かりやすく赤面するあたしをおちょくっているようにも見えたし、
「Aちゃんは好きな男とかおるん？」
と聞いてきたときも、聞くまでもないけど、というような表情をしていたし。
「僭越ながら！あ、あたしの好きな人は丸山さんです！ハイ！」
と勢い余ってまんまと告白しちゃったあたしもアホかと思うけど…。
というか、そもそもあたしの告白に対する返事が「付き合うてみる？」って……。
あたしだって、キラキラアイドルがあたしを本気で好いてくれてると心の底から信じ切っているわけじゃない。
でもさ。
テレビで見る丸山さんは、ゲストの女性にウインクしちゃうし、
丸山さんの女性事情に関するトークが繰り広げられることもあるし、
それはあたしと付き合いだしてからも変わらない。
嫉妬するよ、そりゃ。
あたしに向けられる甘い笑顔は決して特別なものじゃないって気付かされる。
だったら、丸山さんにとってあたしはどういう存在なんだろうか。
一応あたしも女という属性だから、
"わーい女の子だ！食べちゃお♪"
的なノリで付き合っているのでは……？
一度、聞いてみたことがある。
「丸山さん、あたしのこと好き？」
「んー？何でそんなこと聞くん〜？」
「いやだって、好きって言ってくれたことないし…」
「んふふ〜どうやろうね〜♪」
キスをして、はぐらかされた。
すごくポジティブに捉えれば、わざわざ言わなくたって態度で分かるでしょ〜ということなんだろうけど……
どう見てもはぐらかしてるし
遊びにしては甘すぎる
本気にしては軽すぎる
ふわふわ甘々の愛情をくれるのに、手を伸ばしても掴めない。
中途半端のお付き合い。
分からない。
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作者名：渡璃凛 | 作成日時：2020年8月25日 16時
