綿菓子（橙） ページ21
ふわふわと曖昧な関係が続いて、もうすぐ1年になる。
ちゃんとはっきりさせるには、どうすればいいんだろうか？
あたしに何ができる？
……何もできない。
だって分からないから。あなたの本心が。
ふにゃふにゃの笑顔の奥に、何を隠しているのか、そろそろ教えてほしい。
「ほな、付き合うてみよか？」
「―――はい？」
身の程知らずと知っていながら勢いで告白して返ってきたその返事に、
あたしはどれだけ間抜けな顔をしていたんだろう。
「ふはっ、告白しておいてその反応はおかしいんとちゃいますの？」
むにむにとあたしの頬をつまむ丸山さんは、いつも通りの甘々でふにゃふにゃの笑顔であたしを覗き込んでいた。
その切れ長の目に、目元と口元のホクロに、くっきり刻まれたえくぼに、
あたしの心臓はもはやキャパオーバーだった。
あの時は、間違いなくお互いにいい雰囲気で、
当然丸山さんもあたしを好きでいてくれてるもんだと舞い上がっていたんだけど……
そうでもないのだろうか、と考える今日この頃。
何でかって？答えは一つ。
――それは、丸山さんが女の子大好きな人だという事実。
まぁつまり、女の子の扱いに慣れているということだ。
アイドルをやってる彼は、グループの中でも圧倒的にファンサに熱く
女の子のファンのことを妻と呼び
スタッフの女性の髪形の変化にいち早く気付き
すぐ女性の頭をぽんぽん撫で
……完全にプレイボーイじゃないか！
と思わざるを得ないあたしをどうか許してほしい。
「ほんま、Aちゃんは可愛ええなぁ〜^^」
テレビで丸山さんのそういうエピソードを耳にしては、
「そんなことされた女の人は絶対勘違いするでしょ…」
なんて呆れていたはずのあたしも、
丸山さんから掛けられる甘々のセリフに見事に勘違いをすることになってしまったんだ。
丸山さんの「付き合うてみよか？」という言葉には、一体どんな意味が含まれていたんだろうか……
嫉妬に苦しんでしまうあたしは、おかしいですか？
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作者名：渡璃凛 | 作成日時：2020年8月25日 16時
