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ふわふわと漂っているくせに消えてはくれない中途半端な気持ちをぶつけるかのように、あたしは大倉くんと飲みに行くことが増えた。
「お前がそんなに一途やったとは思わんかったわ(笑)」
「これはもう、不可抗力だよね。もうどうにもならなくて笑えてくる」
どうにも消えない気持ち。
どれだけ経っても好きなものは好きで、もはや理性というものが仕事をしてくれない。
気持ちを消そうと奮闘してはやっぱり好きだ、という循環をグルグル繰り返していくうちに、あたしは一つの答えに辿り着こうとしていた。
「あたしさ、やっぱりこのままでいいかも」
「ん？どういう意味？」
「好きなもんは好きなんだよ。だから無理して気持ち捻じ曲げるんじゃなくて、もう普通にこれまで通りにすればいいんじゃないかって思えてきた」
「あー、、なるほどなぁ」
2回目の告白で玉砕したあと、ショックもあったけど、何より恥ずかしいって気持ちが大きかった。
軽いノリで好き好き言い続けてきて、改めて告白をした結果しっかり振られるというイタイ女だって。
信五への気持ちはこの数か月で消えなかったけど、その恥ずかしさを和らげるのには十分な時間だった。
「やっぱりあたしは前向きでなきゃ！って思ってさ。だから、近いうちにまたご飯誘おうかなぁって」
「ふぅん……ま、ええんやない？Aちゃんがそれでええなら」
「無理やりお友達に戻ろう大作戦だよ(笑)」
今日も楽しく大倉くんにお酒に付き合って頂いて、店の前で別れた。
「……ほな、頑張りや？」
「いつになるか、分からないけどね(笑)」
「…すぐやと思うで？」
「ん？どういうこと？」
大倉くんは怪しげな笑みを浮かべて、ほなな、と言ってさっさとタクシーに乗って行ってしまった。
あたしも乗せろよ！って思ったけど、まぁいいや。
あたしも別でタクシー呼べばいいや。
携帯片手に歩き出すと、不意に手首を掴まれた。
「ひっ……」
振り返ると深く帽子を被った男の人。
マズイ。あたしの追っかけだろうか。
暗くて人もいないし、ちょっとやばいかもしれない……
掴まれた手首を振り解こうともがきつつ、掴まれていない方の手で携帯に１１０番を打ち込もうとすると、
「ちょちょちょちょ！何警察呼ぼうとしてんねん！」
―――………
ねぇ、嘘でしょ…？
今まで何のアプローチもなかったくせに、何でこんな急に、
あたしの前に現れちゃうかな？
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作者名：渡璃凛 | 作成日時：2020年8月25日 16時
