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初めて信五に告白した時は、流石に受け流すようなことはされなかった。
「ねぇ信五、あたし、信五のこと好きなんだけど……」
超ガサツなあたしの、らしくない緊張Maxの告白は、多分信五にとってびっくりだったんだと思う。
二重幅の広いくりくりの目をさらに見開いて、それから眉を下げて、
「…すまん、俺、別に彼女いらんねん」
という返し。
断られたときは、普通に女の子らしく凹んだよ、当然。
これだけ気が合って、仲良くて、ご飯も行く仲だったら、結構イケるんじゃないかって思ってたから。
「あ、でもこれからもトモダチとして仲ようしようや！なっ？ええやろ？」
振られて傷心の女の子にこんなことを言っちゃう信五のデリカシーのなさに、この時は随分救われた。
当然あたしは諦められるはずもなく、その後も懲りずに信五との交友関係を続け、猛烈アタックをするという道を辿ることになった。
「Aちゃんって、村上くんのどこが好きなん？」
ある日突然、番組で共演した信五のメンバーの大倉くんにそんなことを聞かれたときは、少々驚いた。
「――ガサツだけど優しいとこ、ですかね」
そう答えたあたしに興味をそそられたのか、大倉くんはしょっちゅうあたしにちょっかいをかけてくるようになり、
今では話し相手として、或いは飲み友達として、そこそこ仲良くなった。
「何か進展あったん？」
「あると思う？(笑)」
「そうやろな〜(笑)」
あたしのバレバレなアタックは、もはや周囲の人にネタとして扱われるようになっているのだが、
割と本気で好きだということを知っている人は、マネージャーと大倉くんだけだと思う。
「村上くんってそういうん慣れてなさそうやし、照れ隠しとちゃうん？」
「照れ隠しだったとしてもあんな容赦なく暴言吐いたりどついたりしないでしょ…(笑)」
せやろな〜、と適当に相槌を打ちながらどんどんジョッキを空にしていくこの人は、あたしの話を聞く気があるのか否か。
「うん、でも、あたしが好き好き言ってるのも、もはやネタになってるから、信五ももう、そんな風に捉えてるんだろうね」
「ほな、もっかい真剣に告白すればいいんとちゃう？笑い話の流れやなくて、ちゃんとそういう雰囲気作ってさ」
ほう。大倉くんにしてはいいこと言うじゃないか。
でもさ……
「それすらも、笑い飛ばされそうな気がするんだよね……」
そう、信五はそういう人だ。
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作者名：渡璃凛 | 作成日時：2020年8月25日 16時
