・ ページ11
一応、数多くの雑誌の表紙を飾ってるあたしは、ネット上で
「美しい見た目に反してファンキーな性格で親しみやすいモデル」
なんて謳われるモデルの仕事をしてる。
だからか、バラエティ番組にも引っ張りだこで、自分で言うのも何だけど順風満帆のモデル生活！！
……というと言い過ぎだけど、それなりにお仕事も貰えて上手く行ってた。
そんな中、とある番組の収録で共演した信五に惚れた１年半前。
共演者や大物俳優に容赦なくズバズバ突っ込み、好感度なんてくそくらえ、笑いが取れればいいんじゃ！みたいなスタンスの信五と初めて共演したときは、何だこの人？と思った。
だけど見れば見るほどこの人あたしに似てるなぁって。
仲良くなりたい！って思った。
信五と仲良くなるのには、そう時間はかからなくて、
女性でも誰でも容赦ない信五はあたしに対してもやっぱり容赦なかった。
だけど当たりがきついとか、ガサツとかだけじゃない、時折見せる不器用な優しさや気遣いだとか、彼が持つ芸能人としての信念とかに、あたしのハートはがっちり掴まれ。
ガサツなあたしにはそぐわない、淡い恋心が生まれたのだ。
「んまぁ〜〜！」
何だかんだでご飯に付き合ってくれる信五は、本当はあたしのこと結構気に入ってるんじゃないか？と思わざるを得ないよね。
「お前、売れっ子モデルやのに何でこんな旨い焼肉屋なんか知ってんねん？Aらしいけどさぁ」
「モデルだって焼肉くらい食べるでしょ？デリカシーないよねほんと！
モデルだってねぇ、ガッツリ食べる人は食べるし、うんこもおならもするんだよ？」
「阿呆！そないなこと言うな！モデルに憧れ持っとる奴らの夢ぶち壊してまうやろ！
……ほんっま、ガサツやなぁお前は」
「信五にだけは言われたくないね。腹筋バキバキ・スタイル抜群アイドルのくせに口悪いし、声デカすぎてうるさいし、歯はガチャガチャだし」
「歯は関係あらへんやんけ！あと褒めるか貶すかどっちかにせぇ！」
……とまぁこんな会話は日常茶飯事。
だけど恐ろしいくらい気が合うんだよね。
……
傍から見ればきっと、ただの友達なんだろうけど。
信五もきっと、ただの友達としてしか見てないんだろうけど。
「ね、そろそろあたしと付き合ってよ」
「嫌や。俺今彼女募集してないねん」
もう何度目か分からないこの掛け合いにそれなりに傷ついてるあたしの心に、この人は気付いているのだろうか？
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 132人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：渡璃凛 | 作成日時：2020年8月25日 16時
