キ ラ イ 喪 失【そらる】

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医師によると、私は1人の子供を庇い、
歩道橋から落ちてしまったらしい。
頭からの大量出血と骨折、それに加え、子供が落下した時の重力により、心肺停止だったらしく、
2ヶ月ほど意識が戻らなかったそうだ。


そして、その時に偶然 通った『そらる』という人が救急車を呼んでくれたそうだ。
まふくんが言うには私と『そらる』と言う人とは面識があるらしい。

それを聞いたところで、
そんな人に聞き覚えがなかったし、
思い出せるわけでもなかった。


_______私とはどういう関係の人なんだろうか。


それをまふくんに聞くと悲しそうな顔をして、
『気にしないでいいよ』と言った。
それに私は『そっか』と返しただけではあるが、
正直、すごく気になる。



でも、そう言ってくれたのにはきっと理由があるから、
理由がわかるまで、理由を言ってくれるまで、私は気にしないことにした。


＊＊＊


次の日、
病室の窓から差し込む暖かく、優しい光が心地よい。

やることもないのでぼーっとしていると、
病室の扉が勢いよく開いた。

それは昨日も居てくれたまふくんと、知らない男の人。
その男の人は私を見ると、太陽のように眩しく笑って、


「よぉ、元気かA！！」


大声で私の名前を呼んだ。
見かけが少し、ヤンキーのようで怖いと言うのが
本音だが、その笑顔に私も自然と笑い返した。


「あ、えっとね、この人は……」


とまふくんが説明しようとするのを遮って、
その男の人は言う。


「キヨ！！改めてまたよろしくな！！」


またその人はニコッと眩しい笑顔を私に向けた。
私はそれに笑って頷いて、


「初めまして。よろしくね、キヨくん」


そう返答した。
すると、一瞬悲しそうな顔をしたように見えたが、
「おぅ！」と元気に返事した。



_______会ったこと、あったのかな…



わかるはずもないのに、私は自分に問いかけた。

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