page2「病気と死」 ページ3
姉は病気だった。
それも、一生治ることのない病気だ。
詳しくは知らない。
心配を掛けさせないように、
と思って居たのだろう、何も教えてくれ無かったのだ。
その時は両親共に他界していて、聞き出せる相手もいなかった。
そして、
それらしい症状が出ても、
私が聞いても、
風邪だとかインフルエンザとかで適当に誤魔化された。
嘘をつくことが無い姉のことだから、私はそれを信じ切っていたのだ。
だが、
今思えば、出かける頻度や友達の家に泊まる回数が
日に日に多くなっていった。
『今日は仕事の話をしてくるね』
『今日、友達とコラボ録音して来て
遅くなるから泊まってくるね』
そんな私が関われない理由を言った後、
必ず姉は
『ごめんね』
と悲しそうに付け加えていくのだ。
_______私は何もわからなかった。
頼られる姉は人に頼ったことなんて無い。
優しい姉は嘘をついて罪悪感が無いわけがない。
それなのに、
私は何も気付かず笑っていた。
姉が抱えているものの大きさなんてわからずに
ただ、
姉の隣で笑っていたんだ。
全てに気付いて、わかった時には、
もう、姉は瀕死状態で大きな病院のベッドの上だった。
電話がなって、急いで駆けつけた時には、
もう、姉は息絶えていた。
_______遅かったのだ。
姉の死体の周りにはたくさん歌い手さんや友達。
その人達の啜り泣く声や、小さく姉の名前を呼ぶ人もいた。
これ程までに姉は愛されていて、多くの人の心に存在を残したことを
大きく示していた。
「…ぉ、ねぇ………ちゃ…」
私の声も震えてその場に響いた。
それが聞こえたからか、チラホラ私を見る人がいた。
そんなこと構う余裕もなく、
私は硬直した体を無理矢理動かして、姉の側へと駆け寄る。
近くで見ると、その白い肌が一層白く見え、
大きな瞳は固く閉ざされていた。
手を握っても、
姉の温かい手で握り返してくれることはない。
名前を呼んでも、
優しい声音で返答してくれることはない。
泣いても、
背中を優しく摩って慰めてくれることはない。
何回も名前を呼んで、何回も姉の生気を失った顔を見て
何回も、何十回も、私は泣き喚いた。
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雨中と猫。(プロフ) - ちょこさん» うわああああんすみませえええええんがんばります (2022年2月10日 2時) (レス) id: dcb807c257 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2021年12月20日 22時) (レス) @page49 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
雨中と猫。(プロフ) - いちごポテトよーぐるとさん» 返信が遅くなりすみません!めちゃくちゃ嬉しいです、現在別作品「笑えないって」リメイク更新中ですのでもう暫くお待ち下さい!! (2021年12月9日 18時) (レス) id: dcb807c257 (このIDを非表示/違反報告)
いちごポテトよーぐると(プロフ) - 色々な感情で涙が……とても面白かったです…。更新待ってます、! (2021年8月17日 0時) (レス) id: 33ba1212be (このIDを非表示/違反報告)
雨中と猫。(プロフ) - 眠夢_さん» うわああああありがとうございます!!今メインで書いている「笑えないって」という小説のリメイクを行っていてそちらが落ち着き次第こちらも更新しようと考えております!絶対完結はさせますので何卒ー!! (2021年8月13日 3時) (レス) id: 6b41ff11b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨中と猫。 | 作成日時:2017年4月29日 2時