4話 ページ6
「はぁー」
今、円堂が居るのは鉄塔広場。
あれから何度もAと話をする為に校舎内を走り回ったが結果はこの通りだ。
「雅が忙しいって言うのは分かってたけどここまでとはなぁ…」
小さな補足だが円堂達のクラス委員長はAなので担任からの頼まれ事やクラスメイト達との交流、(個人的にであろう)花の世話などがある為、休み時間を教室で過ごしているのを見た事がなかった。
「あぁ！昨日の雅がやったリフティング見て、いける！って思ったのになんで捕まらないんだぁー！」
余りの悔しさに口から溢れる不満…すると
『何が捕まらないんだい？』
「それは…って雅！」
円堂の後ろから疑問の声がする。一瞬そのまま受け答えをしそうになった円堂だが、慌てて後ろを振り返ると探していたAの姿があった。
『ふふふ、驚かせちゃったみたいだね。ごめんよ』
「へーきへーき！だけど、何で俺が鉄塔広場にいるって分かったんだ？」
『あぁ、それは木野さんが教えてくれたんだ。なんでも円堂君が僕を探し回っていたって聞いてね。…教室にあまり居ないから探すの大変だったろ？』
「あーまぁな、でも！今会えてるし大丈夫だ！」
『そっか、ありがとう。それで話って…あ、昨日の続きかな？』
会話をして思い出したのか頭を傾げながら円堂に聞くA。
「そう！帝国学園と試合するの知ってるだろ？」
『うん、看板持って走り回ってたしね』
「ならさ！サッカー部に入らないか？雅、ボールコントロール上手いしやってたんだろ？」
いい返事が返ってくると思っている円堂だが、Aは困り顔のまま器用に笑っている。
『んー…円堂君、申し訳ないけど考えてもいいかい？』
「え、駄目なのか？」
『あー…その、自分の中でちゃんと考えてからサッカーはやりたいんだ』
「考えてから？」
『そう、やってたのも昔だし感覚を忘れてるかも知らないしね。』
「じゃあ俺達と一緒に練習すれば！」
円堂は必死にAを説得するが…
『そう言う事じゃ無いんだよ』
Aは円堂の目を逸らさずに言い切る。真剣な様子のAに円堂は理由を聞けなかった。
「どうして…」
『これは僕の事だからだよ。円堂君』
「…」
『ごめんね………円堂君…あのね、考えて考えて答えが出たらその時は仲間に…入れて、くれるかい？』
その時ばかりはいつも笑っているAの顔に不安の色が出ていた。だがその不安を跳ね飛ばす様に円堂は言う。
「もちろん！」
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作者名：雨の子 | 作成日時：2019年4月17日 16時
