世界は箱庭 (ページ24)

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19話ページ24

『～♪』

陽気に鼻歌を歌いながら花の苗を運んでいるAに駆け寄る人物がいた

「雅！」
『ん？風丸君じゃないか、どうしたんだい？』
「いや、雅が陸上競技場の方に来るのは珍しいからな」
『確かに僕は先生とかの頼まれ事でしかこっちには来ないね。ただ今回は、花を植えに来たんだ』
「花？なんでだ？」
『なんでも保護者の方々から綺麗に花が咲いていて気持ちがいいとか言われたらしくてね。校長から直々に頼まれたんだ』
「それは凄いな…よし！俺も手伝うよ、1人だと大変だろうしな」

陸上部の後輩達に指導をしていたであろう風丸が申し出る

『え？でも、指導してたんじゃないの？』
「変なフォームとかになってないかの確認だから大丈夫だ」
『…なら手伝って貰おうかな』
「あぁ！」

風丸も共に苗を植える作業をした為思いのほか早く終わった2人は水やりをしていた

『ありがとう風丸君。君のおかげで早く終わったよ』
「雅の役に立ったようで良かった」
『ふふ、うん凄く助かっちゃった。それと僕の事はAって呼んでよ、その方が嬉しいからさ』
「そうか？ならA、改めてよろしくな」
『よろしく風丸君』

改めて握手をした風丸とAはお互いに笑みを浮かべる

「しかし、色んな花があるな」
『ふふ、花の事教えてあげるよ』

水をやりながら先程植えた花々に目を向ける風丸にAは一輪ずつ名前と特徴などを教えてあげていた

「成る程、この花には毒があるのか…気を付けないとな…」
『花を食べなければ大丈夫だよ』
「流石に花は食べないな」
『でも余程お腹が空いてたら食べちゃうんじゃない？』
「まさか！」
『ふふ、冗談だよ』
「たく…」

2人の会話は途切れる事なく続いていく

「花の事なんて気にしなかったがAの話を聞くと奥が深いんだな」
『うん、花は綺麗ってだけじゃなくて思いも伝えられるし香水とかも作れるよ。それに加工すれば綺麗なまま残せるから貰っても嬉しいしね』
「花って凄いんだな」

Aの話を聞き関心する風丸

「なぁA…」
『本当、見ているだけでも安らぐよ』

もっと花について聞こうとAに目を向けるが本人は慈しみを込めて花弁を撫でている
その様子を見ていた風丸は不意に胸が高鳴るのを感じた

「…」
『風丸君？』
「…っ！な、なんだ！？」
『ぼーっとしてたから』
「俺はだ、大丈夫だ！」
『ならいいけど…また花の事話そうね』
「…あ、あぁ」

笑顔を向けるAに目を合わせる事が出来ない風丸だった