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降谷 視点
少女の話を聞いて、不憫だな、と思ってしまった。
エスパニール皇国のことは噂に聞いている。
隣国のヴェスパニア王国と仲がいいとは聞いていたが、まさか王と女王がともに訪問に来るくらいだったとは。
そして彼女のサラサラの金髪についている髪飾りをくれた人は、もう誰も残っていないのだ。
僕と一緒だな、と心の中で思った。
大切な人を失い、失い、失い続けて、でも足を止めるわけには行かなくて。
僕はこの仕事を本望としているし、そのおかげで悲しみのどん底から這い上がることができた。まだ立ち直れてはいないが。
でも、彼女は。目の前にいる齢16の少女は、出生と同時に自らの人生を決められ、そういう運命の元育てられた。悲しみの置き場も、苦しみのはけ口も、一切学ぶことのないまま、ここまで来てしまったのだ。
この少女に、少しでも僕にできることがあったなら。
自分で自分がおかしいとわかる。
少女に自由を与えるということは、彼女を国に引き渡さないということ。
つまり、警護もなく決して万全の安全対策とは言い難い状態で一国の王女を預かるということ。
それで何かあったら、僕の大切な日本がどうなるかなんて、目に見えている。
この少女の話を聞く前だったら、一も二もなく公安の名の下 厳重かつ丁重にもてなし、受け入れ態勢や飛行機の安全が確保でき次第国に送り返していただろう。
事実、僕の手には証拠とするつもりであったテープレコーダーと、いつでも風見に連絡が取れるように連絡先の画面のまま閉じたスマホがある。
それなのに。
この少女の話を聞いてから、何かがおかしい。
自分より一回りも小さい少女が、涙をこらえひたすらに自分の運命の元 生きる姿を見て。
守ってやりたいと
その悲しみを拭ってあげることはできないけれど。
ともに背負うことくらいはできるのではないかと。
松田たちに言ったら、何ていうかな。
松田「その人をよく知りもしないくせによくいうぜ!まぁ、可愛こちゃんだから仕方ないけど。」
萩原「なぜかいつも自信満々で言うよな、降谷は。」
伊達「まぁ、それが降谷らしいって言えばそうなんだけどな!」
いいかな、ヒロ。俺の心に、一度くらい従ってみても、いいだろうか。
ヒロ「それが、お前の望む正義なら。…ゼロ」
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drokmt2000(プロフ) - ジントニックさん» ありがとうございます!!更新は遅めになるかもしれませんが、頑張ります! (2019年8月17日 8時) (レス) id: ada097a728 (このIDを非表示/違反報告)
ジントニック(プロフ) - 凄く素敵です!これからも頑張ってください!!! (2019年8月3日 0時) (レス) id: 5f62958279 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花鳥風月 | 作成日時:2019年2月20日 20時