四夜目 ページ4
｢大変！大変だよー！｣
その大きな声で自分が“いつもの自分の姿”ではないことに気が付く。
二本足で立っているが、今の自分の姿はまさに猫そのものだった。
大きな声の主は黄色っぽいトラの猫の姿をしているが、やはり二本足で立っている。
近くにいた優美な猫がトラの猫に深呼吸をするように言う。
優美な猫もまた二本足で立っていた。
思い切って二匹の猫に何があったのか尋ねる。
トラの猫の話によるとなんでもこの国の王様が病に倒れたのだとか。
｢早くしないと！手遅れになってしまうわ！｣
トラの猫は｢アンジェ｣と止めに入る。
｢アンジェ｣と呼ばれた優美な猫は俯いて言葉を一つ一つ選ぶように言った。
｢分かってるわよニャトラ。そんなことをしたら、私が消えてしまうことぐらい。でも、わた｣
続けようとするアンジェを遮るようにしてニャトラが言う。
｢私が作るわ。アンジェは早く王様の元へ行って。すぐに届けるから。｣
そしてアンジェは目前にある城へ、ニャトラはアンジェとは逆方向へそれぞれ走り出した。
気になって聞いてみたものの想像以上に深刻な事態に陥っているらしい。
しばらくすると、ニャトラが戻ってきた。
おそらく王様の元へ向かっているのだろう。
ニャトラが走って運ぶ様子は端から見ても危なっかしい。
そう思った瞬間ニャトラは転んだ。
運んでいたものは投げ出され、自分は思わずキャッチした。
運んでいたものが無事だと気づきニャトラは安堵の表情を見せる。
しかし、ニャトラが取りに来る様子はなかった。
い や 、 取 り に 来 る こ と が 出 来 な か っ た の で あ る 。
｢早く行かなきゃ｣と言ってはいるが、立つことが出来ない様子であった。
事情を知ってしまっているが故に放っておくわけにはいかなかった。
ニャトラには自分が城に届けることを伝え、一目散に目前にある城に向かって走り出す。
王様の近くにいたアンジェは涙を浮かべていた。
王様をちらりと見ると息をしている様子がうかがえる。
どうやら間に合ったようだ。
アンジェに手渡すと、中身を取り出した。
中に入っていたのはプリンである。
涙を流しながらアンジェは王様の口にプリンを運ぶ。
王様が回復している様子が離れて見ていてもすぐに分かった。
その一方でアンジェはキラキラと光り影が薄くなっていった。
もうすぐ消えてしまうのだろう。
自分もまたアンジェのように光り出す。
ああ何とも濃い夢だったな。
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作者名：ユイ | 作成日時：2020年8月30日 15時
