お男子ヤン！！

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「…竜宮さん…」



綾瀬ミホが小さな声で私の名前を呼ぶ。
戸惑いを隠し切れていないその声は、"綾瀬ミホ"ではなく彼女自身の声であろう。

だからこそ、今の私にはそれに平然と答えられる程の余裕はない。




「…私は、竜宮じゃない、私だって…私だって"綾瀬"の人間だもん…」




あなただけが綾瀬じゃないの。
私だって綾瀬なの。

あなたは"綾瀬"の名を1人で背負って、私は"竜宮"の名を1人で背負って。
だけれどその大きさには差があって。

こんなの、こんなの理不尽じゃないか。



「…ああー！！！！だからてめーうぜーんだよ！！！！俺様の質問にさっさと答えやがれ！！！！！」



私の態度についに痺れを切らした佐野凪が、私の視界から綾瀬ミホを奪うように、私と彼女の間に割り込んでくる。



「お前がこのゴリラを羨ましいってのはわかった、こんなゴリラのどこが羨ましいのか俺には理解できねーけど、それでもこんなゴリラを羨ましいってんなら、それはどこなんだよ。」



ああ、この人は分かってる。

私がほしい物が何か理解して、その上で聞いてくるんだ。
待ってるだけじゃ何も得られないから。

だからこそ、言わせてくれるんだね、
私に、自分で。

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