君を振り向かせるのは【HQ】 (ページ29)

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4　烏野高校ページ29

黒尾side

『さ、皆さんこちらです！』

いくつかの高校との試合を経てゴールデンウィーク最終日、先頭を歩く今日のAさんは明らかに生き生きとしていた

そんなに楽しみなものなのかと後ろで研磨と一緒になって歩く俺は、なんとも複雑な気持ちだった

「楽しそうだな」
『はい！楽しみです！』
「そんなA初めて見たんだけど」

Aさんの隣を歩く夜久との会話もいつもより楽しそうに聞こえる

「で、烏野はどうなんだ？」
『強いですよ！凄く！！』
「その自信なんだよ、一応音駒のマネだよね？」
『そうですけど、凄いんです！あ、そう！夜久さんと同じリベロ！西谷はやる男ですよ』
「だから何その自信。腹立つな」

夜久とAさんの会話を聞きながら、初めてAさんから出た男の名前

『身長私より低いんですけど―……』
「今俺見たろ！確実に見たろ！」
『い、いやいやいや、全然、何も思ってないです！』

もしかしたらその西谷って奴が好きな奴とか？

「そういえば前に言ってた、自分より身長の低い奴の話」

聞こえてくる声に淡々と口を開いた研磨

「え、マジで？」
「うん。もしかしてその人が――」
「言わないで！心折れるから！」

やっぱりそうなのかと自分の中で答えに辿りついてしまったことが悲しい

『それでうちのエースはもっと凄いんですよ』
「お前どこのマネージャーだよ」
『あ、いや、烏野のエースのことなんですけどね』
「わかってるよ！」

なんかもう完全に音駒のマネージャーだってこと忘れてるよねあの子

そんなに烏野がいいんだ

そんなにそいつのこと好きなんだ

「ハァ……なんか心折れる…」

既に失恋してるってわかってるけど、これじゃあ更に追い打ち掛けられているようなものだ

「なぁ研磨―…」

そう言って振り返るとさっきまでいたはずの姿がそこになくて

「あれ？研磨？」

見渡しても研磨の姿はなかった

「ったく、何やってんだよ…悪ィ！研磨がいなくなった！」

そう言うと全員が一斉に振り向く

「ゲームしてて逸れたんだと思うんだけど、俺ちょっと探してくるから先行っててくれ」
『場所わかりますか？』
「あぁ、なんとなくわかるから大丈夫」

そう言うとみんなから別れて研磨を探しに行った