妹が好きで何が悪い２【プリレジェ】

ep 19　嵯峨沢ハル ページ27

カランカランとドアが開く音がして


「よっ」
『いらっしゃしませ』


入ってきたのはいつもと変わらないハルさんだった

席に案内して、座ったハルさんが私を見上げて

そう、色々あり過ぎて忘れていたけれど、私ハルさんとキスしたんだ

そう思うと急に熱くなった頬を誤魔化すように注文票に視線を落とした


『ご、ご注文はいかがされますか？』
「今キスしたこと思い出してた？」


その言葉にドキリと揺れた心臓と更に熱くなった顔


『ッ、別に思い出してませんっ』
「思い出してましたって顔してるのに？」
『ッ――もう、やだハルさん』


私を見て笑うハルさんは絶対からかっているんだ

ハルさんにとってキスは本当にただのお代みたいなものだろう

私とじゃなくたって、する人はいっぱいいるだろうし、しているだろうし

好きとかそういう感情がないのはわかってる


『いい大人が子供をからかうのはやめてください』
「Aのこと子供だなんて思ったことないけど。それに――ちゃんと意識してくれてるんだなって思ってる」


あの時と同じようなハルさんの真剣な瞳が私の瞳と重なって


『ご、ご注文は……』


これ以上どうしたらいいかわからなくて、話を変えたのは私の方


「来週バイト入ってる？」
『え？来週は……』


けれどハルさんの次の言葉は注文でもなく、さっきの話とも違うもので


『多分入ってなかったと思います』
「あーそっかぁ。じゃあさ」
『はい』
「その日俺学校迎えに行くわ」
『え、』


思わず出てしまった声


「ロイヤルフェニックスだっけ？なんとなくわかるし」
『い、いやいやいや！それは駄目です。というかいいです』
「何それどっち？」
『いや、だから遠慮しておきます。迎えには来なくていいです』


何故急にそんなことを言い出したのかわからないけれど、尊兄や竜ちゃんみたいに奏さん達と何かあっても嫌だし

久遠さんの鋭い瞳にまた睨まれるような気がしてならない


「冷てめぇなぁAは」
『と、とにかくそれは遠慮しておきます』
「んー、でも――行くから待っててよ」


そう言ったハルさんは何故かフッと柔らかく笑って


「アメリカンよろしくね」


いつものコーヒーを注文した

▽　京極竜・鏑木元→←▽

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す