妹が好きで何が悪い２【プリレジェ】

▽　京極竜・鏑木元 ページ28

アルバイトが終わると暗くなった道を一人で歩いていた

仕事の休憩中に来てくれたハルさんは「店に戻りたくない」と会計時に駄々を捏ねていたが

いい大人が何を言っているんだとその背中を送り出した


――来週迎えに行くから――


ハルさんはあんなことを言っていたけれど、本当にうちの学園へ来るつもりだろうか

もしそうなら先に奏さんの送りを断らなければならない

そしてできるだけ内密に

じゃないとハルさんが来たなんて竜ちゃんに知られれば絶対何か一言二言言われそうだ

そんなことを考えながら歩いていれば、聞こえた話し声

いや、正確には言い合っているような声

喧嘩だろうか

嫌だなと思いながら歩みを進める私の耳にそれはどんどん大きくなって

見えてきた姿は黒と白の制服


「だから、俺だけで充分だって言ってんの」
「キミじゃ危ないから迎えに来たんだけど」
『何、してるの？』


そこには竜ちゃんと何故か元がいて

まさかその言い合いが二人だなんて思わなくて驚いた


「A。アルイバイトお疲れ様。Aのこと迎えに来たんだよ、弟くんだけじゃ危ないと思って」


私に向けて微笑む元は次に竜ちゃんに鋭い瞳を向ける

多分それはこの間のことを言っているのだろう

というかまだ覚えていたなんて恥ずかしくて、早く忘れてほしい


「は？だから危なくないっつーの」
「どうだか。さ、A、帰ろう」


そう言うと元に差し出された手

元に手を差し伸べられたのは初めてで、その手に手を重ねていいものかどうしようか迷ってしまう

けれどフッと笑った元は私の手を取ると、歩くよう促した



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