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その人は朱雀グループ会長、朱雀俊哉と名乗った
朱雀グループと言えば私でも名前を知っているくらいの大手企業で、何故そんな人がと疑問しか浮かばなかった
話によれば、朱雀さんは母を贔屓にしていた客だったというじゃないか
しかも私のことも、母の病気のことも知っていたみたいだ
「それでお母さんがもしもの時はAちゃんの生活の保障を、と約束したんだ」
まだ頭の中がぼーっとする中、朱雀さんの歩むまま私は付いて行くだけで
もしかしたら騙されているかもしれない。けれど今の私には母のことも私のことも知っているこの人しか頼りがなくて、細い糸を手繰り寄せるような思いで付いていった
「君のお母さんは素敵な人だったよ」
『そう、ですか』
「Aちゃんもいい子だって聞いてるよ」
『……』
「できればうちで面倒を見たかったんだけどね、うちは私も忙しいし妻も他界しているから」
そう言って立ち止まったのは自動車の整備工場で、やっぱり騙されたのかもとそんな考えが頭の隅に過った
「さぁ、今日からここが君の家だ」
何故か自信満々に言った朱雀さんに眉根を寄せれば、奥から出てきた知らない男女
誰だろうか。私を売るつもりなのか。いや、そんな価値なんてあるわけない
「こんにちは、Aちゃん」
『……こんにちは』
「この人達は君の家族になる京極夫妻の正義さんとあかりさんだ」
朱雀さんの言っている意味がわからなくて余計に眉根に皺が寄れば
「君のお母さんのたった一つの願いは、君を養子に迎え入れてくれる温かい家族だ」
『……』
「うちは子供が四人もいて少し騒がしいんだけど」
「Aちゃんが来てくれたら子供達もきっと喜ぶわ」
そう言った夫妻の優しい声に胸の奥が少しだけ温かくなった気がした
「どうだ?気に入ったかい?」
きっと朱雀さんも京極夫妻も悪い人じゃないだろう
けれど
『すいません、少しだけ時間をください』
母を亡くして整理がつかないまま新しい世界に飛び込む勇気は私にはなかった
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成田(プロフ) - 綾瀬さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!これからも頑張りますので、また読みに来てくださると嬉しいです☆ (2020年1月3日 20時) (レス) id: 9a366f7078 (このIDを非表示/違反報告)
綾瀬 - 毎回とても楽しみです。頑張ってください (2020年1月3日 19時) (レス) id: 006049a680 (このIDを非表示/違反報告)
成田(プロフ) - 滴さん» こんばんは。ご指摘ありがとうございます!「ら」が抜けていましたね!直しました! (2019年10月19日 22時) (レス) id: d5fb161253 (このIDを非表示/違反報告)
滴 - こんにちは(*^^*) かなりお久しぶりです(笑) 物語読んでいて気が付いたのですが...。 ep.4 Team奏▽ページ20のここの部分 何これ、私もはけた方がいいのだろうかと頭の隅でそんなことを考えなが応えれば これ正しくは考えながらではないんでしょうか? (2019年10月17日 12時) (レス) id: fa78cdaff1 (このIDを非表示/違反報告)
成田(プロフ) - 滴さん» こんばんは。コメントありがとうございます、読んでいただきありがとうございます!本日更新致しましたので、また読んでくださると嬉しいです★ (2019年6月2日 22時) (レス) id: 9a366f7078 (このIDを非表示/違反報告)
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