【ヒロアカ】ドラゴンな女子高生 3 (ページ7)

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第97話前だけ見てりゃいいページ7

目の前に現れた小さな″私″は、
悲しそうな顔をしていた。
差し伸べられたその手を、握らなければと思う程に。

考える前に、触れていた。
…そして、身体が軽くなる感覚。

重なった手がグンッと引っ張られて、瞬きする間に緑谷君とエリちゃんの元に飛び込んでいた。

『！』

それを認識した時には、手に温かさは無かった。
なぜなら…その相手は離れ始めていたから。

(待って、お願い、行くな)

手を伸ばしても届かない。
代わりに触れたのは、真っ白な女の子(エリちゃん)。

＿＿＿内側に引っ張られるような感覚とともに、取り巻いていたエネルギーの渦は消えた。

遠くに、泣きそうな顔で微笑む″私″が見えた気がした。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

Aの悩みの種は、己の個性についてだった。

個性は知っている通り、
ドラゴンの力とそれに起因した物質の生成・操作の力とされていた。

…だが、深く考えてみればおかしな点がある。
前者と後者は本当に関連しているのか、という事だ。

Aは実際、これに違和感を感じたことは…ある。
ただ個性の暴走に恐怖し、力の抑圧を意識していた彼女はそこまで考えてこなかった。

今朝の信じられない出来事。
現在使えるのが″ドラゴンの力のみ″ということ。

これらの要因から、
″それ″は現実味を帯び、ある仮説に辿り着いた。

2つの個性。
ドラゴンの力は前世の″私″、
物質操作系の力は今世の″私″の個性。
＿＿＿と、いうことである。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

『…驚かないで聞いてほしいんだけど』

「あ？」

深紅の瞳がこちらに向けられる。
私は合わせず、遠くの光を見ながら口を開いた。

『私、2つの個性を持ってる』

沈黙。
それは一瞬だったが、長く感じられた。

「それが何だよ」

『！』

返ってきた答えに、毒気を抜かれた。

(もっと、キレられると思った)

正直、怖かった。
何かを人に打ち明ける事がこんなに怖いとは思わなかった。

『……信じてくれるのか？』

「あぁ？…てめェはてめェだろうが」

いつもと比べて寛容的な爆豪君。
その言動に思わず彼の方を向いた。

＿＿すぐ横で、目がかち合うと思わず。

「前だけ見てりゃいいんだよ」

『！！』

立っていたはずの爆豪君の視線は、私と同じ位置。
真っ直ぐな瞳から、逸らすことができない。

「俺はてめェを超える！
勝負ついてないこと忘れんな！！」

頭をぐしゃぐしゃとされた時には、彼の姿はもうなかった。