【レエンカルナの姉妹】3 ページ10
「……シオ、ン…?」
立ち上がることもままならないダメージを負った筈の彼女が、剣で掴んでいた腕を斬り落とした。
まず最初に理解したのはそれで、次に頭に入ってきたのは、その刀身が光り輝いているということ。
緑色の優しくも力強い光の筋は、竜の鱗をも軽々と裂く。
「ランサ!!!」
名を呼ばれ、慌てて彼女の後方へと移動する。
「サナ=パルウス!」
硬直状態となったのを良いことに、直ぐ様回復呪文をかける。多少痛みは軽減しただろうが、残念ながら私の力量では下級の回復魔法しか扱えずあまり回復しない。
それでも、彼女は確かに、立っていた。
『……そうか。巫女の……』
突然の出来事に暫し呆然としていたドラゴンは、それまでと真逆に、納得した風に声を出した。
『………巫女が相手ならば我だけでは分が悪いな。
ついでだ、腕を斬った餞別をくれてやる』
体を横たわらせ、明らかに敵意のなくなったそれに動揺を隠せないらしく、シオンの持つ剣が震える。
手でそれを制止し、続きを促す。
『お前達が来た道。そこを抜けた先にある国。
今、其処に魔王軍が進行している』
「!? そこって、」
「パスミール国のある…!」
私達の驚いた表情を見て愉快そうに鼻を震わせたドラゴンに疑問を投げ掛けようとするが、それはすぐに体力を回復させようとするかのように眠りについてしまう。
ドラゴンの寝息だけが響く洞窟で動きを停止させていたが、金属がカタカタと震える音を聴き顔をあげる。
「彼処には、レディク師匠や町の皆が…
………行くよ、ランサ!!!」
いつもの明るい表情を一変させ、蒼白とした顔に汗と血が滲んでいた。
その部屋を後にする前に、ふと立ち止まりドラゴンの方を向く。質問は山程ある。
巫女とは何者なのか、私とシオン、どちらを指しているのか。どれか1つなら時間があるだろうと思ったものの、どれにすればいいのかがわからない。
『………早く行け。我は気紛れなんだ』
じっと見つめられたのが気にさわったのか、不機嫌そうにそう呟く。教えてくれたのは事実と思い、先を行くシオンを追う為一礼して去る。
だから、私の運命の一部を暗示した言葉を聞く事はなかった。
『国の滅ぶ様など、二度も見たくはなかろう』
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雪埜(プロフ) - 【更新】「魔女フィリア2」更新しました。3ヵ月もの間、たったこれだけの話の為に空けてしまい申し訳ありません。本編はもう少しさくっといくはずです。できれば、終わりまで見守ってくだされば幸いです (2016年6月29日 2時) (レス) id: a49cc21bc2 (このIDを非表示/違反報告)
雪埜(プロフ) - 【更新】「魔女フィリア1」更新しました。長らくお待たせしました。この章はあともう1〜2話程で終わりの予定なので、かなり短いです。その中でフィリアについてどれ程伝えられるかどうか。努力します (2016年3月29日 1時) (レス) id: 2e4e16571f (このIDを非表示/違反報告)
雪埜(プロフ) - 【更新】「レエンカルナの姉妹4」更新しました。短いですがこの姉妹の話はこれで完結です。文字数の都合で詰め詰めな部分が多いですが、わからない部分は後々補填していくので待っていて下さると幸いです。次の話で序章も終わり、本編へと突入です。 (2016年2月2日 2時) (レス) id: 2e4e16571f (このIDを非表示/違反報告)
雪埜(プロフ) - 【更新】「レエンカルナの姉妹3」更新しました。もうこの話も終盤、次の章が見えてきました。これだけ蒔いた伏線ですが回収しきれるかは微妙なところです。頑張ります。 (2016年1月11日 20時) (レス) id: 2e4e16571f (このIDを非表示/違反報告)
雪埜(プロフ) - 【更新】「レエンカルナの姉妹2」更新しました。三月程経ちましたがようやく更新できました。もう少しで此方も終わりそうなのでお待ちくださると幸いです。設定は生えるもの。こんな予定なかった… (2015年11月30日 22時) (レス) id: fc245ecc04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しのみや | 作成日時:2014年12月31日 4時