【レエンカルナの姉妹】1 ページ8
パスミール王国。
小規模な国だが、周りを自然に囲まれた、豊かで平和な国だ。城下町の店裏にて聞こえる剣と剣の重なり合う音は、平和なこの国には不釣り合いだが、民がそれを嫌悪することはなかった。その後に聞こえる叫び声と、何かが倒れる音も、この国では日常茶飯事なのだ。
「てて…やっぱランサの回復魔法はよく効くなぁ」
「シオンは修行でも無茶し過ぎ。見てる方はすごい心配なんだから」
「その台詞も何度目だか。言わせてる私が悪いんだけどさ」
「わかるならちゃんとしてよ…
毎度毎度、心配するこっちの身にもなってほしいわ」
その店裏。薄い緑の髪を下の方で一つ結びにしているランサと呼ばれた少女は、心配と呆れの混じった様な顔で、手をもう一人の少女の腕にかざしていた。
もう一人、シオンはと言うと、こちらは濃い緑の髪を上の方で雑に一つにまとめている。ランサの白い肌とは対照に少し黒い。その黒い肌には剣でつけたような傷と、焼けた痕が見てとれる。
説教が続く中、浅黒い肌の男が部屋へと入ってきた。がっしりしているかと問われれば違う細い身体だが、筋肉はしっかりとついており、ある程度のレベルの者なら、どれ程洗練された肉体かがわかるだろう。
「おい。回復し終えたら、お前ら二人に客が来てるから行ってこい」
「はーい、お師匠様」
「わかりました」
二人が店先の方まで向かうと、そこには小太りのいかにも商人な格好をした男がいた。愛想の良い笑顔を浮かべてはいるが、恐らく営業用だろう。
「どうも初めまして。
旅の商人ことデグスといいます」
「初めまして。私はシオン。スペラシオン=レエンカルナよ」
「私はエスペランサ=レエンカルナと申します。
それで、今日はどんな依頼で?」
「商売の邪魔になる魔物がおりまして…」
内容は、大陸と大陸を結ぶ洞窟に住み着いた魔物を倒してほしいというものだった。
「力仕事ならお手の物ね! わかったことだし早く行こ、ランサ!!」
力試しが何よりも好きなシオンは、碌に聞きもせず立ち上がる。ランサも立ち上がらせようと彼女の腕を引っ張るも、困った様に苦笑するだけだった。
仕方ないなとぼやいて座り直すと、商人はそういえば…と付け足した。
「魔物の動きが活発になってるのは、魔王の仕業とか。
何でも、もう長くない間に魔王が地上の侵略を謀っているらしいですぞ」
詳しい場所も聞き、再び立ち上がる。何故か、嫌な予感がなくならなかった。
9人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪埜(プロフ) - 【更新】「魔女フィリア2」更新しました。3ヵ月もの間、たったこれだけの話の為に空けてしまい申し訳ありません。本編はもう少しさくっといくはずです。できれば、終わりまで見守ってくだされば幸いです (2016年6月29日 2時) (レス) id: a49cc21bc2 (このIDを非表示/違反報告)
雪埜(プロフ) - 【更新】「魔女フィリア1」更新しました。長らくお待たせしました。この章はあともう1〜2話程で終わりの予定なので、かなり短いです。その中でフィリアについてどれ程伝えられるかどうか。努力します (2016年3月29日 1時) (レス) id: 2e4e16571f (このIDを非表示/違反報告)
雪埜(プロフ) - 【更新】「レエンカルナの姉妹4」更新しました。短いですがこの姉妹の話はこれで完結です。文字数の都合で詰め詰めな部分が多いですが、わからない部分は後々補填していくので待っていて下さると幸いです。次の話で序章も終わり、本編へと突入です。 (2016年2月2日 2時) (レス) id: 2e4e16571f (このIDを非表示/違反報告)
雪埜(プロフ) - 【更新】「レエンカルナの姉妹3」更新しました。もうこの話も終盤、次の章が見えてきました。これだけ蒔いた伏線ですが回収しきれるかは微妙なところです。頑張ります。 (2016年1月11日 20時) (レス) id: 2e4e16571f (このIDを非表示/違反報告)
雪埜(プロフ) - 【更新】「レエンカルナの姉妹2」更新しました。三月程経ちましたがようやく更新できました。もう少しで此方も終わりそうなのでお待ちくださると幸いです。設定は生えるもの。こんな予定なかった… (2015年11月30日 22時) (レス) id: fc245ecc04 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しのみや | 作成日時:2014年12月31日 4時