【魔女フィリア】2 ページ13
私に転機が訪れたとするならば。
これを転機と呼ぶのなら。
恐らくこの事を言うのだろう。
村人の言いつけなどなんのその。何時もの様に独りで水晶を弄んでいれば、ふ、と村の方角へと目を向ける。
硝子玉が割れる様な音が脳内に響き渡り、それが鳴ったから起こりうる自体は村の方から立ち上る煙によって容易に想像出来た。
あの村にはこれといって親しい人がいるわけではない。むしろ憎むべき人ばかりだ。
だが。
xxとしての使命を全うしようとする本能だったのか。はたまた良心が残っており、それが動かしたのか。
私の足は自然と、だが確実に、段々と、前へ前へと歩み、駆け出していた。
魔物が襲ってくるのを全て呪文で消し飛ばせば、道が開け、村が見えた。
白い骨が露になっている死骸が転がっており、それで結界が解けたのは支えになっていた女達の骸が掘り起こされたからだと考えられた。
何時もなら踏みいるだけで殴りかかってくる男連中は女と同じ様に、或いはそれ以上に惨たらしい屍となっていた。
一見静かになった其処から耳を澄ませば聴こえる、微かな呻き声。
何の感情も浮かんで来ない自身を嫌悪しつつ、生存者がいる希望にすがる様に音の元へ。
牧草に沈みこんでいたのは一人の男。
何時も率先して暴力を奮う奴だ。
どうやら牧草がクッションになり気絶していたらしく、死ぬまでには至っていなかった。
「生きてる?」
「…………ぉ…ぇ、ぁ……」
『おまえは?』と次を促す様に薬草を与えつつ首を傾ければ、その男は魔物に抵抗する為に在った筈の刃を私へと向けた。
「……が、い、…れば…ッ」
「私がいなければ何?」
何故助けようと思ったのかと過去の自分問い詰めようか、とも思わないくらい、もう冷めきっていた。感情が、とか、そういうものでなく、ただ、モノを見る様に。
_命を救えば理解してくれるとでも思ったのかしら
瀕死の男はナイフを握る力も弱く、何れ程弱かったかといえば……非力な私が、そのまま切っ先を返し喉元に突き刺せる程度、と言ったところか。
「私がいなければ?
可笑しな事を言うのね。私を此処に閉じ込めたのは貴方達じゃない。結界が壊れるのを恐れて、良いように使える私を残したのは貴方達」
でもこれで終わりと真に静かになった村を見渡す。血の臭いの充満する気持ちの悪い村。
娘の死骸だけは埋め、まるで逃げるように、或いは軽やかに駆けるように、其処を出た。
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雪埜(プロフ) - 【更新】「魔女フィリア2」更新しました。3ヵ月もの間、たったこれだけの話の為に空けてしまい申し訳ありません。本編はもう少しさくっといくはずです。できれば、終わりまで見守ってくだされば幸いです (2016年6月29日 2時) (レス) id: a49cc21bc2 (このIDを非表示/違反報告)
雪埜(プロフ) - 【更新】「魔女フィリア1」更新しました。長らくお待たせしました。この章はあともう1〜2話程で終わりの予定なので、かなり短いです。その中でフィリアについてどれ程伝えられるかどうか。努力します (2016年3月29日 1時) (レス) id: 2e4e16571f (このIDを非表示/違反報告)
雪埜(プロフ) - 【更新】「レエンカルナの姉妹4」更新しました。短いですがこの姉妹の話はこれで完結です。文字数の都合で詰め詰めな部分が多いですが、わからない部分は後々補填していくので待っていて下さると幸いです。次の話で序章も終わり、本編へと突入です。 (2016年2月2日 2時) (レス) id: 2e4e16571f (このIDを非表示/違反報告)
雪埜(プロフ) - 【更新】「レエンカルナの姉妹3」更新しました。もうこの話も終盤、次の章が見えてきました。これだけ蒔いた伏線ですが回収しきれるかは微妙なところです。頑張ります。 (2016年1月11日 20時) (レス) id: 2e4e16571f (このIDを非表示/違反報告)
雪埜(プロフ) - 【更新】「レエンカルナの姉妹2」更新しました。三月程経ちましたがようやく更新できました。もう少しで此方も終わりそうなのでお待ちくださると幸いです。設定は生えるもの。こんな予定なかった… (2015年11月30日 22時) (レス) id: fc245ecc04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しのみや | 作成日時:2014年12月31日 4時