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【レエンカルナの姉妹】4 ページ11

魔物の爪痕…ドラゴンのものと思われる、巨大な痕もあったが…が、其処にはあった。

 私達が辿り着いた時には、既に魔王軍の去った後だった。
 最下層と思われる魔物はまだ残っており、生き延びた国民達で遊んでは投げ捨てていた。できる限り救える人は救ったが、子供ばかりでほとんど全滅と言って良かった。
 住んでいた家屋まで行く気にはなれず、魔物を斬り伏せ、生きている人に回復呪文をかけ目を背け続けた。

「はい、おしまい。まだ痛いところある?」

「…もういたくないよ。
おねえちゃん、ありがとう」

 少年がにこりと笑って、私と、その後ろで辺りを警戒していたシオンに言う。
 手を振って去っていく後ろ姿を見ていたが、ふいに彼は何処に向かうのかと考える。家屋はほとんどが焼け、壊され、人もほとんどが殺されていた。
家族や親しい人が生き延びていたのかとも思ったが、彼の言った言葉を思い出して背筋が凍る。

「………シ、オン」

「…どうしたの?」

「あの子、追いかけなきゃ…駄目だ、あの子きっと…」

 魔力が切れたせいもあってか力の入らない足に喝を入れ、去っていった方向へと這う様にして歩く。
 今この国は滅亡した。
 “巫女”とドラゴンが言っていたが、どちらが巫女だとしても、ドラゴンの指す巫女があの勇者と共に歩む者である巫女だとしたら。
 この滅亡した国に残る小さな命の灯を守ることこそ、私達の役目ではないのか。



 曲がり角で幾度か迷ったが、探していた少年は存外早く見つかった。私達二人が目を背けていた場所で、冷たくなっていた。…そういえば武器を扱っていた店だったとぼんやりと思う。

 目の前から零れ落ちたもの、そして、見てしまった現実。
 全てが重なって、ようやく、泣いた。泣いたと言うよりは吼えたと言う方が正確かもしれない。

 そっと寄り添ってくれた姉がいなければ、壊れてしまっただろうと思う程に。

 使命を果たせなかった。私も、シオンも。

 それがどれ程重くのしかかったことか。
 依頼を受け、外に出ていなければ、私達だって死んでいたかもしれないという恐怖が。
 小さな子を救えず生きているという罪悪感が。

 全てが襲いかかる。



「…ランサ。私ね、敵討ちに行くよ。国民全員の。
まず世界を救おうとしている勇者様を探す。この世界の理通りならいるはずだから」

「……待って、私も行く」

 姉に全て任せるなどできない。荒れ地に儚げに咲く白い花を見て、小さく笑みを浮かべた。

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設定タグ:光と闇の少女達   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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雪埜(プロフ) - 【更新】「魔女フィリア2」更新しました。3ヵ月もの間、たったこれだけの話の為に空けてしまい申し訳ありません。本編はもう少しさくっといくはずです。できれば、終わりまで見守ってくだされば幸いです (2016年6月29日 2時) (レス) id: a49cc21bc2 (このIDを非表示/違反報告)
雪埜(プロフ) - 【更新】「魔女フィリア1」更新しました。長らくお待たせしました。この章はあともう1〜2話程で終わりの予定なので、かなり短いです。その中でフィリアについてどれ程伝えられるかどうか。努力します (2016年3月29日 1時) (レス) id: 2e4e16571f (このIDを非表示/違反報告)
雪埜(プロフ) - 【更新】「レエンカルナの姉妹4」更新しました。短いですがこの姉妹の話はこれで完結です。文字数の都合で詰め詰めな部分が多いですが、わからない部分は後々補填していくので待っていて下さると幸いです。次の話で序章も終わり、本編へと突入です。 (2016年2月2日 2時) (レス) id: 2e4e16571f (このIDを非表示/違反報告)
雪埜(プロフ) - 【更新】「レエンカルナの姉妹3」更新しました。もうこの話も終盤、次の章が見えてきました。これだけ蒔いた伏線ですが回収しきれるかは微妙なところです。頑張ります。 (2016年1月11日 20時) (レス) id: 2e4e16571f (このIDを非表示/違反報告)
雪埜(プロフ) - 【更新】「レエンカルナの姉妹2」更新しました。三月程経ちましたがようやく更新できました。もう少しで此方も終わりそうなのでお待ちくださると幸いです。設定は生えるもの。こんな予定なかった… (2015年11月30日 22時) (レス) id: fc245ecc04 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しのみや | 作成日時:2014年12月31日 4時

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