【センラ】魔女狩り剣士と魔女/鎖座波 ページ21
「ばあちゃん!まじょのおはなし、きかせて!」
金糸雀色の髪を揺らす幼い少年が老婆にそう詰め寄ると、老婆は童話が書かれた本を傍から取ってゆったりと語り出した。
「昔から、ある森の奥に恐ろしい魔女が住んで居ったそうな。
その魔女は昔から人間を館に引きずり込んで食べたり、魔術の実験の対象にしたり、酷くこき使い、薬品を飲ませたりしていたのです。
ある日に、村の若い剣士が魔女を殺しに__魔女狩りに行きました。
ですが、その剣士が二度と帰ってくることはなく、村の人達は悲しみに暮れます。
そして、その魔女を倒そうと毎年毎年剣士が魔女狩りに行くが、一人として帰ってきた剣士は居ないそうです。
魔女は死ぬ事無く、生き続けます。
魔女は、今もどこかで生きています。
今日も、また一人剣士が命を落して行くのでしょう。」
おぞましい、恐ろしい話だと言うのにも関わらず、金糸雀色の髪はピョコピョコと揺れ、彼のその瞳はより一層輝きを増す。
「ばあちゃん!まじょ、ってあのもりのまじょやろ!?おれがたおしてくるな!」
「あ、アンタ!それはやめなさい!」
「ええやん!おれならたおせるにきまっとるやろ!」
幼いながらに彼は剣士を目指しており、そして、この童話の魔女を倒すことを目標にしていた。
童話の中に出て来る魔女は実在しており、そしてまた、森の奥に住んでいると言うことも事実であった。
この幼い男子が住んでいる家から少し離れた森の中に魔女は住んでおり、人間から攻撃することさえなければ何も害はないとされていたが、それでも人間は魔女の事を怖がった。
村人全員が魔女の事を恐れおののき、森に近付こうともしないのに、その男子だけは全く怖がる素振りなど見せず、寧ろ魔女を倒す!と豪語して森に自分から近付いて行こうとする程だった。
「よっし!ばあちゃん!おれせかいいちのけんしになるわ!くにがうらやましい、っておもえるぐらいの!」
「そうしてお国のために戦えるといいねぇ」
「うん!だからそのときは、まじょをたおしにいくな!」
老婆の心配など全く関係無しに魔女を倒す、と言う無謀で無駄な夢を掲げて彼は瞳をキラキラと輝かせた。
見た目からすれば一国の王子のような、大人しそうな見た目をしていると言うのにも関わらず、考えること、発言する言葉はやんちゃな自由奔放な男児そのものだった。
__「なぁんて、懐かしい話しやなぁ」
そうして、彼はシトリンの瞳を細めて魔女を見てうっそうと微笑むのだった。
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関西風しらすぅ@坂田家 - 坂田さんの絵本描いてる設定とかリアリティありすぎて好きです。幼いセンラさん天使すぎな。 (2019年6月16日 11時) (レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)
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