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「おい!まじょ!おまえ!いえにかえせいうてるやろ!」
目の前に居る金糸雀色した髪の人間の男児を魔法で動けないようにしていると、煩く反抗してくる。
興味の無さそうに窓の外に目を向ける。
小さい頃から一人だった。
両親は心無い人間に殺されて私一人だけ残された。
昔からそうだと言う。
人間が館に押し込んで来て、殺しに掛かる。
そうして、私達が邪悪な存在だ、昔からずっと生き続けていて気味が悪い、死んでしまえ、と言って殺していく。
私達魔女を殺していく。
私の両親も、その両親も、そのまた上の両親も、そのまたまた上の両親も。
皆、皆人間に殺されていく。
事実無根の罪を着せられて殺されて行く。
そうして、死んで行くと同時に私達魔女は人間に呪いを掛けて人間を道連れにする。
その光景を先祖代々見てきて子供に学習させるのだと言う。
だから私も両親が死んで行く姿を小さな棚の中からこっそり覗いて居た。
「おい!いつまでむししてんねん!さっさとはんのうせぇや!」
「うるさい」
ぎゃあぎゃあと煩い人間の子供にたった一言だけ伝えると、人間は不貞腐れたように頬を膨らませた。
「うるさいってなんなん!おれはおまえたおせるんやからな!」
「ほぅ…じゃあその魔法解いてみろ」
「く、くそ!いまとけへんねや!」
「ほら見ろ解けないじゃないか」
ふっ、と鼻で笑い軽くあしらうと悔しそうに顔を顰める姿がこれまた面白くて笑ってしまう。
こんな小さな姿で館まで迷い込んで来て、自分から館に仕掛けてある魔法に引っかかると言うのだから私を倒そうなんて何十年掛かっても無駄だろう。
「おれは!けんしなんだから、おまえのことなんてすぐたおすんや!」
「嘘つけ。人間、名を何と言う?」
「だれがまじょなんかになまえおしえるか!なまえつかってのろうんやろ!わかってんねんぞ!」
「私の名はAだ。お前も名乗れ」
「…おまえからいいだしたんなら…センラや。センラさまってよべ!」
「はいはい。センラさまな。センラさま」
「バカにしてるやろ!」
口の減らない餓鬼だな…と溜め息を吐きながらも何だか殺そうとかそんな気にはならないので暫くの間は置いておいてもいいかな、と甘い考えが頭を過ぎる。
***
9月○○日
今日は人間の子供が家に来た。
何だかうるさい奴だが家に置いていても嫌な気はしないから暫くは家に泊めてやろうと思う。
***
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関西風しらすぅ@坂田家 - 坂田さんの絵本描いてる設定とかリアリティありすぎて好きです。幼いセンラさん天使すぎな。 (2019年6月16日 11時) (レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)
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