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…後でしっかり確かめておかなきゃな、と思い直した所で扉が開く。
言わずもがなお待ちかねのほくちゃんが、ういーおまたせーとか気の抜けた声と共にやってきたのだ。
…この人、イケメンなくせして玉に瑕な所がやや見受けられる。
残念である。
「寝てても良かったのに」
「いや、むりでしょ。ていうか私、どこで寝たらいい?」
「え?どこって、ここ?」
サラサラになった赤髪をかきあげながら指差して、私の隣がボスンと沈んだ。
さも当たり前かのような顔で告げられるそれに、どこと無く分かってはいたけどこの人の頭の中にはそれ以外の選択肢は無かったんだなあと思うと。
思うと…、
「はあ」
「もう俺眠い、ねよ」
「…うん」
最早ほくちゃんの言動一つ一つに何かを言っていたらキリがない気もするので、ここはひとまず大人な私が空気を読んでみる。
このベッドが芸能人様のお給料サイズで良かった。
二人で横になっても十分な広さだ。
「明日何時に起きる?」
「ほくちゃんに合わせるけど、いつもは?」
「えー仕事ないと俺昼過ぎとか」
「じゃ、そうしよ」
「目覚ましいらない?」
「うん、ほくちゃんがいらないなら」
「じゃかけませーん」
スマホをベッドサイドのテーブルにわざとらしく放り投げてまた嬉しそうにほくそ笑んでる。
目覚ましなしで起きるの、ほくちゃんにとったらすごく久しぶりなのかもしれない。
「なんか、楽しみ」
「なにが?」
「明日から、Aと一緒に何しようかなーって」
「…そんな、大した価値のある人間ではありませんけども」
「Aとならなんでも楽しいと思う」
「ほんと、ほくちゃんさあ…」
「んー?」
眉を顰めながらぐいっと近付いてきた顔、今日一の近さで思わず反射的に仰け反りそうになるけど背後は壁だ。
それはもうすべすべの頬もおでこも唇も、目と鼻の先にある。
リアルに。
おいおいこんな展開本当にやめてくれ。
まだ始まって数時間で一体どれだけ私の気持ちを弄べば……そこまで思ったところでハッと思い出す。
…ああそうだこの人、普通に目が悪いんだった。
「…何でもない、おやすみ」
「えーなんでそっち向いちゃうの」
ほくちゃんの戯言には聞こえないフリで目を瞑る。
すぐ隣には国民的スター兼、身の程知らずな片思いの相手がいるって言うのに。
布団が心地良すぎて、案外この場所が居心地良すぎて、何だかすぐにでも眠れそうな気がした。
…そういえば、彼女いるかどうか聞くの忘れたな。
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も。(プロフ) - usaさん» コメントありがとうございます!この一番もどかしい時間を楽しみながらのんびり進めていけたらと思います。更新ペースも早い方ではないですがまた覗いて頂けたらと思います(T_T)ありがとうございました! (2020年7月21日 13時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)
usa(プロフ) - 今回の更新もとっても面白かったです。早くほくちゃんとくっついて欲しいような、付かず離れずのもどかしい距離が楽しいような…!今後の展開も楽しみにしていますのでご自身のペースで無理せず更新がんばってくださいね。引き続き楽しみにしております! (2020年7月20日 22時) (レス) id: c80ccd6f24 (このIDを非表示/違反報告)
も。(プロフ) - 飴さん» ご意見ありがとうございます^ ^長文かつストーリーが遅いことは明記させて頂いており、また趣味かつ自己満足の作品ですので読んで頂くことを強制しておりません。合わないと思いましたら読むことを辞めて頂いて構いませんよ。お時間を割いて頂きありがとうございます。 (2020年7月18日 15時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)
飴 - 何度も続けてのコメントですみません。 長々と失礼なコメントで失礼致しました。 それでは...。 (2020年7月17日 19時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
飴 - またまた続けてのコメントですみません...。 そして台詞の行間隔あけたほうが良いと思い ました。 行間隔が詰まっていると読みにくいので...。 (2020年7月17日 19時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:も。 | 作成日時:2020年4月25日 23時