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なんとか始業時間に間に合ったようで、パソコンの前で仕事モードのAの顔は何度見ても気に食わない。
俺の家で、俺のAを他に取られるのは、そりゃイヤに決まってるでしょ。
時間が無いとか言ってたくせに、ちゃっかりキスマークは消されてるし。
あからさまに唇を尖らせてアピールしてみるも、やっぱり効果はゼロで、呆気なく会議が始まってしまった。
…はあ、暇なんだけど。
こうもリモート会議が重なってくると、" 同じ会社のA先輩 "の妄想レパートリーもかなり消化されてきてしまう。
多分、社内恋愛における美味しいストーリーは一通りこなしたと思う。
…妄想の中だけですけど、何か。
諦めてコーヒーでも淹れようとキッチンに向かう。
そう言えばAも何も食べてないだろうし、せめて会議が終わるまで珈琲の一杯でも淹れてあげよう。
そこまでは優しさだったんだけど、そこに少しの悪戯心が加わってしまうのが俺のいけないところだと思う。
一応、自分でも分かってはいるんだけど。
思いついたら止められなくなって、マスクの下で口元が緩むのを抑えられずにマグカップに即席珈琲を淹れてAの元へ向かう。
こちらをちらりと見るも、気遣いのみと判断したようで、Aはいい感じに油断してくれている。
よし、チャンスは完全に今しかない。
「失礼します。お嬢様、珈琲が入りました」
「…!?!?!?」
「ミルクもおつけしますね。では失礼しました」
「ほっ…!!!!!」
ほくちゃん!と続きそうな勢いでこちらを見ながら、目の前の画面とを見比べて当たり前に仕事の方に天秤が傾き渋々会議に戻ったようだった。
画面の向こうにも聞こえるか聞こえないかのラインだったと思うけど、若干の空気の澱みを見るに聞こえてたっぽい。
笑いを堪えるのに必死になりながら側を離れると、ポケットに入れていたスマホがブルっと振動して通知を伝える。
見れば、Aからのメッセージだった。
" 執事さん、後で話し合いましょう "
嫌な予感がして振り向けば、絶対零度の微笑みが待っていた。
どうやら会議までの執行猶予で、お嬢様のご機嫌取りの作戦を考えなければならないようだ。
…とりあえずまあ、執事、美味しい朝ごはんでも作ってきマース。
その後、Aの職場では暫く" お金持ちの一人娘で執事付きで暮らしている "という噂が流れたらしい。
それからというもの、俺はリモート会議中の入室を禁じられたのは言うまでもない。
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も。(プロフ) - usaさん» コメントありがとうございます!この一番もどかしい時間を楽しみながらのんびり進めていけたらと思います。更新ペースも早い方ではないですがまた覗いて頂けたらと思います(T_T)ありがとうございました! (2020年7月21日 13時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)
usa(プロフ) - 今回の更新もとっても面白かったです。早くほくちゃんとくっついて欲しいような、付かず離れずのもどかしい距離が楽しいような…!今後の展開も楽しみにしていますのでご自身のペースで無理せず更新がんばってくださいね。引き続き楽しみにしております! (2020年7月20日 22時) (レス) id: c80ccd6f24 (このIDを非表示/違反報告)
も。(プロフ) - 飴さん» ご意見ありがとうございます^ ^長文かつストーリーが遅いことは明記させて頂いており、また趣味かつ自己満足の作品ですので読んで頂くことを強制しておりません。合わないと思いましたら読むことを辞めて頂いて構いませんよ。お時間を割いて頂きありがとうございます。 (2020年7月18日 15時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)
飴 - 何度も続けてのコメントですみません。 長々と失礼なコメントで失礼致しました。 それでは...。 (2020年7月17日 19時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
飴 - またまた続けてのコメントですみません...。 そして台詞の行間隔あけたほうが良いと思い ました。 行間隔が詰まっていると読みにくいので...。 (2020年7月17日 19時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:も。 | 作成日時:2020年4月25日 23時