第二話 ２ ページ4
その杖は、扱えれば至高。
だが、フィオがそれを使えないことは、相手には知られていた。
再び放たれようとするものに、ターフェはフィオの杖を使って盾を創る。
だが、脆い。
「そんな初級魔法じゃこの改造銃防ぎきれねーぜ！」
放たれた魔法は盾を割り、フィオを庇ったターフェの腕を切り裂いた。
その隙にAが二人を連れて走り出す。
辺りの気温が数度下がったような感覚がする。
「待ってくださいA！！
ターフェの手当てを…」
「フィオ、君は何で、杖が使えないのにあんな無茶をしたんだい？」
「どうして…そのことを…」
驚くフィオにターフェが代わりに答える。
「そんなすごい杖を君がちゃんと使いこなしているなら、国が戦争で負けるわけなじゃないか。
簡単な話さ」
「大方、その杖を制御するために学園に来たってところでしょ？」
「そ、その通りです」
そう、Aとターフェの言うことは全て間違っていない。
フィオは、杖が使えない。
そして、さらに追い打ちをターフェが掛ける。
「その杖を見せればビビって相手が逃げると思っていたのなら、君の頭はお花畑だな。
ショートケーキより甘いお姫様だ」
Aは不機嫌さからか、話さない。
フィオは素直にターフェの言うことを吞み込んだ後、顔を上げた。
「ターフェは私よりずっと賢い…。
君には何か考えがあるから、余裕なのではないのですか？
傷の償いはあとで必ずします！
ですから教えてください…。
この窮地を脱する方法を！」
それは、とても強い意志のこもった言葉であった。
Aは少しだけ、目を見開いた。
目の前の女は、前世から何も変わっちゃいない。
その間にも話は進んでいく。
気付いた頃には既にターフェがフィオの杖を使っていた。
「なるほど…こうすれば一時的に力を取り戻すことが出来るのか…。」
その姿は、ずっと恋焦がれ、そして自分を置いて亡くなった。
懐かしき愛おしい者の姿。
その事実にAは言葉が出なかった。
「た、ターフェ？」
「あぁ、そうさ。
説明なら後で嫌というほどしてやる。
だがその前にあいつらにお仕置きをしなくちゃなぁ。
あと、Aはその顔をどうにかしろ」
Aの顔はそれはもう、うっとりと蕩けた顔をしていた。
無理もないだろう。
彼女は、ターフェの顔が何よりも好きなのだ。
その証拠に、ターフェが男たちに選択を促している間、ずっと羨ましそうにしていた。
最高に悪い顔をしたターフェに迫られるなんて…と。
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作者名：紅華 | 作成日時：2022年4月7日 19時
