【ユーリ!!!onICE】僕のそばに…【男主】 (ページ26)

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21話ページ26

スケート場について優子さんに顔を出すと久しぶりと言ってリンクに招いてくれた。もとはと言えば、ここのリンク場での事故。それを知っているのは、ここで働いている人たちと勇利一家だけ。僕の両親は知らない。ここのだって教えてしまえば、僕はここでは滑ることができなかったから。

　リンクには誰もいないと確認した僕は、そっとリンクに足を滑らせた。

『……、はぁ』

　息をついて南くんに教えた通りの順番でジャンプを飛んでみた。けれど、もう体がガタついていてジャンプすることができなくなっていた。教えたときはちゃんと飛べていたのに。

『滑れない。この業界から離れて数年。僕ができることなんて何もない』

　自暴自棄になった僕はだれにも止められない。たとえ勇利にさえ。僕を泊められるのは僕だけだ。ぶつぶつと言葉を氷に発しながらぎゅっと強くこぶしを握り締めると、指先が冷たくなっていく感覚が襲う。爪が手のひらに食い込んで血が出てきた感覚もした。

　ここには誰もいない。ならば、今まで感じてきた不快感をここでぶつけてみてもいいのではないか。誰も入れないように釘を刺したつもりなのだが、ヴィクトルや勇利がここに来たらすんなり通してしまうかもしれない。そういうことを考えたらここで言ってはいけないのかもしれない。

『周回してから、休憩しよう……』

　その姿を一人の少女に見られていたなんて知らない。

　帰る支度を済ませた僕は優子さんに使わせてくれたお礼を言ってこの場を後にしようとした。その時、袖を誰かに掴まれた。

『……どうしたんですか。アクセル。他の二人はどうしたんですか？』

「Aの姿が見えたから、再来週に起きるユーリと勇利のエキシビションマッチの案内を持ってきたんだけど……、どうしたの？落ち込んだようにも見えたから……」

『南くんのところに行って来て疲れたんですよ。へぇ、ユーリがここに来たんですか。わざわざロシアから……』

「ロシアのユーリと知り合いなの？」

『ネット上での知り合いということにしておいてください。あと、そろそろ袖を離していただけますか？』

「ごめんね。でも、何かあったらお母さんもいるしお父さんもいるし、勇利もヴィクトルもいるから困っていたら話して？」

『子供に分かってしまうほど落ち込んでいたのでしょうか。大丈夫ですよ。他の人の迷惑にならないようにします』

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