13話 ページ15
「Aくんー?どこー?」
勇利の呼ぶ声が聞こえる。寝ぼけているのか眠たい声が廊下に響く。近くの部屋でヴィクトルが寝ているというのに、随分と大きな声だ。
『僕は、ここ。ごめん、電話が来ていたから話してたんだ。近くにいなくてごめん』
「大丈夫だよ。もう5時半なんだね。お母さんのご飯食べよ?」
『あ、うん。こんな時間からでも、大丈夫なの?』
僕は勇利の手に引っ張られて食堂のほうへと向かう。その表情は後ろにいる僕には見えないけれど、手はどことなく冷たかった。僕のほうも冷たいのだけれど、勇利の手もそれぐらい冷たかった。僕を探してくれていたのか……と思って、いや、ただの思い込みなのかもしれないけれど、そっと勇利の右手を僕の左手で握り返した。
勇利は少しだけ驚いたのか右手が少しビクついて、身長が少ししか違わない僕を覗き込むように顔を見た。少しふふっと笑って逆に僕が先導をきって歩き出した。食堂の場所はもうわかる。大丈夫……と思って突き進んでいたけれど、今の勇利の表情はどういう表情をしていたのかわかるはずもなかった。
勇利 side
僕が起きたときには一緒に寝ていたはずのAくんのぬくもりだけがそこにあった。まだ若干暖かくて少しぬるい。どこかに行ってしまったのではないかと思って、Aくんのスマホに電話を掛けた。
「お掛けになった電話は、現在通話中のため、通信できません」
電話中だ……。僕が知る限り、Aくんの連絡先を知っているのは、ミナコ先生と僕と……あと誰だっただろう。
『―――――、で――――――ふふっ』
「A君……?」
廊下のほうで誰かの声がした。ヴィクトルではない。あの僕でも憧れている人とそれ以外の人の区別はできる。この声は、誰だろう……。あとここに泊まっている人と言えば……。Aくん?
Aくんのいる方向へとゆっくり足を進めると、壁に体育座りをして寄りかかって誰かと楽しそうに通話しているAくんの姿があった。
『やっぱり、ヴィクトルが日本にきていることは誰もが知っている事実なんだね』
――――――ヴィクトルのこと?なんでヴィクトルの話を?
こっそりと通話内容を聞くのは、あまり僕はしない。けれど、どうしてもこの内容だけは聞きたかった。Aくんが、ヴィクトルの話を……、誰かと話している。誰?僕の知っている人?
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オブジェ(元はるかわ)(プロフ) - とても面白いです!更新頑張ってください! (2017年3月21日 0時) (レス) id: 58695a87c5 (このIDを非表示/違反報告)
道化師龍維(プロフ) - マリンさん» ありがとうございます!少しわかりにくい文章があったりしてすみません……。 (2017年1月22日 23時) (レス) id: 0baf07c6ee (このIDを非表示/違反報告)
マリン - とっても面白いです〜〜続き楽しみにしてます!! (2017年1月22日 17時) (レス) id: 78f600e7bb (このIDを非表示/違反報告)
道化師龍維(プロフ) - 進さん» ご指摘ありがとうございます!すみませんでした。 (2017年1月5日 15時) (レス) id: 6c38952fe1 (このIDを非表示/違反報告)
道化師龍維(プロフ) - 鯨さん» ご指摘ありがとうございます! (2017年1月5日 15時) (レス) id: 6c38952fe1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:道化師龍維 | 作成日時:2017年1月2日 22時