83.嘆願 ページ32
「今日の任務、俺も同行させてください」
「お願いします」と深く頭を下げると、
頭上から深いため息が聞こえてきた。
その呆れたようなため息に、俺よりも右隣にいる伊地知さんの方がビクリと身体をこわばらせた。
「伊地知くん、これはどういうことか説明してください」
「俺が伊地知さんに
猪野先輩から任務先を聞き出した翌日である今日。
これから七海さんを迎えに行くのだと言った伊地知さんの車に無理矢理なかば恫喝のように乗り込んだ俺は、児童養護施設の任務に同行するために七海さんに折り入ってお願いをしに来た。
「君はたしか猪野くんの後輩の…」
「呪術高専二年、四級術師の住吉Aです」
そう名乗ると、七海さんは「四級…」と渋い顔をしてこめかみを抑えた。
「…君が二級以上であれば、ありがたい申し出でした。
今回の呪霊は被害から鑑み、二級から準一級以上を想定しています。なので、猪野くんや私が派遣される。その意味を…」
「俺みたいな四級の出る幕じゃないことくらいわかってます！！」
七海さんの言うことをでかい声で遮って、
深く下げた頭をもう一段下げた。
「手柄を立てて推薦をもらおうとかじゃないです。給金もいりません。命の危険があっても守っていただかなくて結構です。
自分の身は自分で守れるし、援護もできます。だから…」
「駄目です。帰りなさい。
君が来たところで役には立たない。周りも、自身もリスクしか背負いません」
そうぴしゃりと言い切られてもなお、頭を上げない俺に七海さんはまたため息をついた。
「…伊地知くん、私はいいですから彼を高専まで送ってください」
踵を返す七海さんの背中にずっと頭を下げる俺に伊地知さんは肩に手を置き、「住吉くん」といつにない厳しい声で俺に語りかけた。
「七海さんが言う通り君の手には余る任務です。
高専に帰りましょう」
そう言われてゆらりと頭を上げた俺に、
ようやく諦めたかというホッとした表情を伊地知さんは向けた。
俺は、その期待を裏切るように拳を握りしめ、大きく息を吸った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 921人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花梨 - とても面白いですね！ 更新、大変だと思いますが自分のペースで頑張ってくださいね! 私も呪術廻戦の作品を書いてますが良かったら作品の題名を教えますか？ (2022年6月6日 16時) (
レス) id: 8e5a2f605a (このIDを非表示/違反報告)
田田田(プロフ) - 雪月花さん» いつもありがとうございます。雪月花さんのコメントが届くたびに書こうという気持ちが湧きます。更新頑張ります。 (2022年2月3日 3時) (レス) id: 225ebf53bb (このIDを非表示/違反報告)
雪月花 - 田田田さん» 大好きな作品なので更新されてるととても嬉しいです！作者さんのペースでいいので更新頑張ってください！！いつまでも待ってます！住吉くんの手榴弾………威力はいかに……。 (2022年1月30日 23時) (レス) @page46 id: dcac8e28b5 (このIDを非表示/違反報告)
田田田(プロフ) - 雪月花さん» 雪月花さん、いつも更新のたびにコメントを残してくださりありがとうございます。遅い更新なのに根気強く応援してくださってとても励みになっております。これからもどうぞよろしくお願いします。 (2022年1月23日 14時) (レス) id: 225ebf53bb (このIDを非表示/違反報告)
雪月花 - 面白いです！！続き待ってます！！七海さん！！マジナイス！住吉くんガンバレー！ (2022年1月19日 1時) (レス) @page44 id: dcac8e28b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：田田田 | 作成日時：2021年1月6日 20時
