偶然か ページ17
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「――ふぅん、そんな危険な所で調査してるの」
『太宰さんの助言有っての選択です、感謝してますよ』
「なんか複雑」
十中八九サボり中であろう太宰さんと肩を並べながら歩く正午過ぎ
こんなんでも一応先輩なので、調査の進捗を当たり障り無い程度に話した
勿論彼、ドストエフスキーであろう男の話は避けてだ
嘘は云っていない、何せ未だ、あくまで私の予想なのだから。――まあほぼ確信しているが
そんな太宰さんは唐突に、「ランチしていこう」と近くの喫茶処に入った
そこの紅茶とナポリタンが絶品なのは悉知済みである
『もう、仕方ないですね』
国木田さんは定時迄に社に来いって云ってたし、少しぐらいサボって行っても大丈夫だろう
「――いやあ、朝も来たけど矢張り紅茶の善い香りが漂うねえここは」
……太宰さんはきっと怒られるだろうけど
と、ここでふと、店内に違和感を感じた
違和感、否、既視感?
――なんだ、どれだ?
一通り店内を見渡して、ハテ、と首を傾げる
「おーい、A、何してるの?早く座り給えよ、私お腹ペコペコだよ」
早々に適当な席に座ってメニューを開いている太宰さんが、未だ店に入って直ぐの所で棒立ちしてる私に怪訝な顔で振り向いた
すみません、と太宰さんの方を見た時だ、一緒に視界に入ったものに目を見開いた
―――そんな、真逆、こんな事って…
「A?」
『あ、す、座ります、座ります…』
太宰さんが座るテーブルに歩みを進める途中、一度視界が捉えた其れから目が離せない
もう一つ奥のテーブル席に座る後ろ姿
ファーの付いたあまり見ない形の外套、さらりとした黒髪に、露西亜風のコサック帽、そんな格好の人、このヨコハマにそう何人も居ない
私の知っている其の人以外、有り得ない
心ここに在らずで席に腰を下ろした
其の男、つい先刻会っていた、フョードル・ドストエフスキーであろう人と背中合わせになる席にだ――
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世河経(プロフ) - 孫うこと無き神作を見つけた (2022年3月23日 11時) (レス) @page4 id: 41bf3298cb (このIDを非表示/違反報告)
野良神(プロフ) - すみません、26ページなんですけど、ドスエフスキーになっていましたよ? (2018年12月21日 14時) (レス) id: d6c3f54fc0 (このIDを非表示/違反報告)
狐の涙(プロフ) - フョードルさん、いいですね。生命の輝き!! (2018年10月13日 21時) (レス) id: e918fb1bd4 (このIDを非表示/違反報告)
ハニー - ドストさんすき…あゝでも生命の輝きもすき…もッと云うなら骸砦組だいすき。 (2018年10月5日 11時) (レス) id: f040ea1a18 (このIDを非表示/違反報告)
彦星(プロフ) - 今更コメントすみません、失礼します。最高でした(;_;) ドス君、、、最高の作品をありがとうございました!応援してます! (2018年7月4日 17時) (レス) id: 3e6db4893b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お餅 | 作成日時:2018年4月14日 15時